アニサキスとは?魚の刺身などによくいる寄生虫7種と対策方法とは?
アニサキスとは、魚介類に寄生する寄生虫の一種です。白い糸のような見た目の小さな寄生虫ですが、アニサキスが寄生した魚介類を誤って食べると激痛や嘔吐を伴う食中毒を起こすことがあります。正しく加熱や冷凍をすることにより、食中毒を予防することができます。
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公式ライター Activel_director
アニサキスとは?
小さな寄生虫ですが、人が誤って寄生された魚介類ごと食べてしまうと食中毒を起こす危険性があり、注意が必要です。
アニサキスの見た目
肉眼で発見できる大きさですが体色が薄いため、白身魚やイカなどの魚介類では外見が見えにくくなります。
アニサキスはうねうねと動いていることが多く、光に反射して透明に見えることもあります。魚を捌いたときに糸のような虫がでてきたら、アニサキスである可能性が高いです。
アニサキスの一生
①アニサキスの成虫は海洋ほ乳類のお腹に寄生する。
②寄生した哺乳類の卵が宿主の糞と共に海水中へ排出される。
③孵化後、幼虫はオキアミなどの甲殻類に捕食され、体内に寄生する。
④オキアミなどは多くの魚介類の餌であり、幼虫は魚介類へ移動する。
⑤寄生された魚介類を海洋ほ乳類が捕食することで、アニサキス幼虫は海洋ほ乳類のお腹へ入り成虫になる。
アニサキス症とは?
原因
魚介類に付着している生きたアニサキスを誤って食べることにより、アニサキスが体内に入って食中毒を起こします。
体の中に入ったアニサキスは胃や腸に辿り着いたあと、寄生するために胃壁や腸壁から内部へ侵入しようとして食い付きます。アニサキスが噛みつくことによって、周辺部が炎症を起こすことが激痛や嘔吐といった症状の主な要因です。
症状
【急性胃アニサキス症】
食後、2〜10時間後にみぞおちの付近に激しい痛みを感じたり嘔吐を生じたりする。
【急性腸アニサキス症】
食後、十数時間から数日後に下腹部に激しい痛みを感じたり、腹膜炎の症状が出たりする。
多くの場合は急性胃アニサキス症です。魚介類を食べたあと、周期的に絞られるような痛みが襲う場合はアニサキス症の疑いがあります。
治療方法
【急性胃アニサキス症】
胃カメラを用いてアニサキスを確認し、先端に鉗子をつけて幼虫の体を胃壁から除去する。
【急性腸アニサキス症】
内服薬を処方し、対症療法をおこなう。腸閉塞などの合併症を起こした場合には外科的な手術が必要になる。
アニサキスが寄生する魚はどれ?
アニサキスがいる魚
カツオ | イカ | サバ | サンマ |
タイ | タラ | サケ | スズキ |
ニシン | ヒラメ | タチウオ | アンコウ |
アニサキスは海水中で生息していて、オキアミをはじめ、宿主を転々とすることで大型の魚やクジラなどへ寄生していきます。
オキアミは多くの海水魚にとって主要な栄養源であるため、アニサキスは海で釣れる魚介類のほとんどに寄生することができます。また、寄生された魚は季節に関係なくみられるので通年で注意が必要です。
アニサキスがいない魚
イワナ | ウグイ | マス | オイカワ |
ヤマメ | イトウ | フナ | アマゴ |
アニサキスが河川にいることはありませんが、海と川を行き来する魚には注意が必要です。
鮭やウナギ、鮎などは海から遡上してくるため、アニサキスが寄生している場合があります。一生を川で過ごす魚や養殖で餌も安全だとわかっている魚では、アニサキスを気にかける必要はありません。
アニサキスの予防方法
・内臓除去
・目視確認
・加熱処理
・冷凍処理
内臓除去
アニサキスは宿主である魚介類が死ぬと内臓から筋肉へ移動します。筋肉に寄生しているアニサキスは内臓にいるものよりも見つかりにくくなるので、魚が新鮮なうちに内臓を取り除く必要があります。
目視確認
加熱
切り身でも厚く切られた魚介類は火が通りにくいこともあるため、十分な時間をとって熱を通すか薄切りの魚介類を代用するとより安全です。直火だけではなく電子レンジやボイルなどでも同じ効果が得られます。
冷凍処理
スーパーに解凍と表示されたお刺身は、水揚げ後に冷凍した魚を使っていて、品質もよいのでぜひ利用してください。
アニサキスの疑問
アニサキスの治療費は?
通常、胃カメラで検査をおこなうだけでも6000円〜13000円ほどかかるので、治療も含めると倍以上の費用になります。治療費は医院ごとに異なりますが、これに加えて初診料や夜間診療費用がかかかることもあります。
医療保険や生命保険に加入している人は手術給付金を受け取れることもあるので、保険会社に確認することが大切です。
アニサキスに効く薬はある?
アニサキスが胃壁や腸壁に噛みつくことによって出る症状や、アレルギー反応によって起こる症状に対して処方される薬はあります。しかし、アニサキス自体を死滅させるような薬は現時点で存在していません。
治療方法はアニサキスを物理的に取り除くことに限られますが、ほとんどの場合、アニサキスが体内から出れば痛みも治ります。
アニサキスは人にも寄生する?
アニサキスは魚介類やクジラなどの海洋ほ乳類にのみ寄生できます。
人がアニサキスを誤食してしまった場合、数日で死ぬか排泄物とともに排泄されます。人間の体内で成虫になることもありません。
食用酢で死滅する?
10%濃度の酢酸では72時間浸しても一部のアニサキスは生き延びます。15%濃度の業務用の醸造酢でも24時間生存するので、調理前や調理過程での酢の処理はアニサキス対策にはなりません。
塩や酢を用いておこなうシメ鯖もアニサキスの危険性があります。実際に、シメ鯖によるアニサキス食中毒の事例も報告されているので、お店で提供される生魚やお刺身には注意が必要です。
アルコールで死滅する?
アニサキスは2.5〜10%アルコール飲料内で約5日間生存することができます。より度数の高い14〜25%アルコール飲料の中であっても約5.6時間生きられます。
通常の料理酒も14%ほどのアルコール濃度がありますが、調理過程で生魚を6時間以上お酒に浸すことはありません。料理酒を使用した通常の料理において、アニサキスを殺せる可能性はほぼないでしょう。
アニサキスは醤油やわさびで死滅する?
確かに、塩やわさびには高い殺菌効果や殺虫効果があります。しかし、わさびがアニサキスに対して効果を出すためには、アニサキスをわさび2gを溶かした塩水に対して60分間以上つけることが必要です。
人が日常生活で使用するくらいの時間ではアニサキスに対しての効果はありません。わさびをつけた刺身や生魚であっても、よく見て食べることが重要です。
アニサキスはよく噛むことで予防できる?
噛むことで予防できると言われることもありますが、どのくらいの強さで何度噛むことでアニサキスが損傷するか、そして胃や腸に侵入しなくなるかという科学的な証拠はありません。
死んだアニサキスを誤食しても発症することはないのですが、噛むことで必ず死ぬと断定できないため、口に入れる前に対処するべきでしょう。
アニサキス以外の魚の寄生虫
①クドア・セプテンプンクタータ
②ブリ糸状虫
③ニベリニア
④テンタクラリア
⑤サンマヒジキムシ
⑥ディディモゾイド
魚屋さんや業者さんが遭遇することの多い寄生虫です。誤食しても人体に無害な寄生虫もいますが、適切な処理をおこなうことが重要です。
①クドア・セプテンプンクタータ
寄生する魚 | ヒラメ |
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特徴 | 体長10マイクロメートルほどであり肉眼では見えない寄生虫 |
対策 | 75℃5分以上の加熱処理や-20℃で4時間以上の冷凍処理 |
症状 | 食後、数時間後に嘔吐や下痢の症状 |
この寄生虫による食中毒は、一過性であり軽症ですむ場合が多いです。加熱処理や冷凍処理で対処できますが、ヒラメは生で食べられることが多く、冷凍処理をすると味が落ちるため対策がしにくくなっています。
②ブリ糸状虫
寄生する魚 | ブリ、ハマチ |
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特徴 | 橙赤色で体長5〜50センチメートル超の大型の寄生虫 |
対策 | 目視で除去する |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
③ニベリニア
寄生する魚 | タラ、スルメイカ |
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特徴 | 乳白色で体長5ミリメートルほどの楕円形の寄生虫 |
対策 | 体表に出てくることが多いため目視で除去 |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
④テンタクラリア
寄生する魚 | カツオ、サバ |
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特徴 | 乳白色で米粒ほどの大きさのニベリニアに似た寄生虫 |
対策 | 目視で除去する |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
⑤サンマヒジキムシ
寄生する魚 | サンマ |
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特徴 | 黒色で体長7センチメートルほど |
対策 | 体表に寄生するため、目視で除去する。 |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
⑥ディディモゾイド
寄生する魚 | カツオ、カジキ、マダイ |
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特徴 | 黄色or黒色で1〜50ミリメートルの塊 |
対策 | 黄色の斑点のように見える寄生された部位を切り落とす。 |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
⑦アンコウ微胞子虫
寄生する魚 | アンコウ |
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特徴 | 2マイクロメートルほどの微小な寄生虫で白い塊を形成 |
対策 | 脊髄に沿って白い塊を取り除く |
症状 | 誤食しても人体への影響はなし |
寄生虫アニサキスの対策まとめ
アニサキスによる食中毒は、なるべく生魚を食べることを避けて、加熱処理や冷凍処理を正しくすることで予防可能できます。魚に潜む寄生虫に気をつけながら、安全に魚料理を楽しみましょう。
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