自転車チェーンのサビは、水に濡れることで発生します。チェーンが錆びてしまうと自転車の走行性能が悪くなり、自転車の寿命に関わります。サビを落とすには、浸透潤滑剤やブラシで対応可能です。また、チェーンに定期的にオイルを注油することや室内に保管することで、チェーンが錆びるのを防止することができます。
自転車チェーンのサビの原因
自転車のチェーンが錆びる原因は水分と酸素です。チェーンが水に濡れてそのまま放置しておくと、空気中の酸素と水分が結びついて金属を腐食させます。腐食が進み茶色や黒色に変色した部分をサビと呼びます。雨や水溜りを踏んで濡れたり、湿気を含む風に当たったりしてもサビの原因になる場合があり、定期的なチェックが必要です。
自転車チェーンが錆びるとどうなる?
自転車のチェーンが錆びると、
走行性能が低下してしまいます。チェーンはペダルを踏んだ力を推進力に変える重要な部分です。サビがチェーンに付着することで、抵抗になり、自転車を漕いだ力を大幅にロスしてしまいます。
加えて、錆びたチェーンをそのまま放置していると腐食が進み、チェーンの寿命を縮めるのみならず、接触しているチェーンリングやギアスプロケットも傷つけてしまいます。
チェーンのサビ取りと交換はどちらがよいの?
自転車のチェーンが錆びてしまったら、
チェーン交換が最もよい方法です。サビ落としとは、サビを削ぎ落とすことであり、細かな形状には向かない作業です。チェーンは小さな部品が組み合わった複雑な構造のため、
サビをチェーンから完全に取り去ることは困難になります。
しかし、軽度のサビを落とすことは可能ですし、新しいチェーンを用意できなかったり、作業できない環境だったりする場合ならば、サビ取りにチャレンジする価値はあります。
自転車チェーンのサビ取りに用意するもの
自転車チェーンのサビ取りに使う道具は基本的にホームセンターで用意が可能です。中には100均で販売されている商品もあり、全て買い揃えても費用は安価ですみます。
浸透潤滑剤
浸透潤滑剤は、サビを浮かせて取りやすくする効果のあるオイルで、サビ取り剤の役目をします。クレ556に代表される揮発性オイルが多く、ホームセンターではサビ取り専用剤も販売しています。塗るタイプもありますが、スプレータイプのほうが作業がしやすいです。
ワイヤーブラシ
ワイヤーブラシは、潤滑浸透剤で浮かせたサビをこそげ落とす役割をします。ナイロン製や使い古しの歯ブラシで代用する人もいますが、ブラシの毛先が柔らかいと固着したサビが落とせない場合もあり、ステンレスや真鍮のブラシがおすすめです。
パーツクリーナー
チェーンの汚れを落とすのがパーツクリーナーです。パーツクリーナーには種類があり、いろいろな場所に使える汎用性の高いタイプもありますが、自転車のチェーンに対して使用するには攻撃性が高すぎます。チェーンクリーニング専用のクリーナーのほうが油や汚れを浮かせる能力が高く、チェーンを傷める心配もありません。サビ落としだけでなく日常のメンテナンスでも使用頻度が高いアイテムのひとつで、1本あると便利なアイテムです。
ウエス
ウエスはチェーンの汚れを拭き取る布あるいは紙のことを指します。拭き取りやすい不織布タイプのウエスがおすすめです。不要になった布切れを使うのもよいですが、布が毛羽立っていると引っかかったり、拭いたあとに繊維が残ったりする場合があり、注意が必要です。
チェーンオイル
チェーンオイルは、チェーンの動きをスムーズにしたり、汚れやサビからチェーンを保護したりする役割があります。まれに揮発性の高いオイルで代用する人もいますが、必ずチェーン専用の潤滑油を使ってください。強力な揮発性オイルは、必要な油分まで取り去ってしまい、チェーンが乾燥してかえって傷つきやすくしてしまいます。
自転車チェーンのサビ取り方法
チェーンについたサビの取り方は、チェーンを磨いてサビを削ぎ落とす単純な作業です。チェーンの洗浄や注油をした経験があるならば、問題なくサビ取り作業ができます。しかし、頑固なサビを完全に取り去ることは難しいので、気になるときは、チェーンの交換をおすすめします。
手順①浸透潤滑剤を塗る
錆びたチェーンに浸透潤滑剤を満遍なく塗ります。潤滑浸透剤はサビだけでなく汚れも浮かせる効果があり、全体にたっぷりと塗ることがコツです。チェーン全体へ塗布が完了したら、浸透するまで数分間待ちます。
手順②ワイヤーブラシで磨く
数分おいた後、潤滑剤が完全に浸透したら、ワイヤーブラシで擦ってサビを取り除きます。擦るときに力を入れすぎると、チェーンに余計な傷がついてしまうので、注意が必要です。錆びていない箇所に傷がつくと、新しいサビの発生源になりかねません。
手順③パーツクリーナーを塗る
ある程度サビが取れたら、チェーン用のパーツクリーナーを全体に塗って浸透潤滑剤では落ちきらない汚れを取り去ります。浸透潤滑剤だけでチェーンがきれいに洗浄されていれば、パーツクリーナーは必ずしも必要ではありません。
手順④ウエスで拭き取る
ウエスでサビや汚れを拭き取ります。ウエスをチェーンに当て、クランクを逆回転させると手早く拭き取ることができます。ウエスでチェーンを拭くときも、力の加減に注意して、チェーンを傷めずに作業することを心がけてください。
手順⑤チェーンオイルで仕上げる
チェーンがきれいになったら、仕上げにオイルを塗ります。汚れを落とし終わったチェーンは傷つきやすいので、チェーンを傷やサビから保護する意味でもオイルを塗るまでがサビ取り作業です。ただし、塗りすぎるとかえってホコリやゴミを吸着する原因となります。オイルの量は適量を意識し、余剰分はウエスで拭き取ってください。
家にあるものを使ってサビを取る方法
家庭にあるものでもサビ取り道具の代用ができます。どれもあくまでも代用品であるため、サビ取りの効果は専用品に劣りますが、手軽に用意でき、覚えておくと便利です。
サビ取り剤の代用品
お酢やクエン酸はサビ取り剤の代用品です。酸性の液体は、
酸化した金属から酵素を取り除く働きがあり、チェーンからサビを浮かせてくれます。
使い方も潤滑浸透剤と同じで、錆びた箇所に直接塗って数分間放置し、サビが浮いたらよく拭き取ってください。ただし、チェーン内に残った酸がサビの原因となる場合があり、すすぎを入念にする必要があります。
研磨剤の代用品
ペースト状にした重曹や歯磨き粉に入っている研磨剤が、スチールブラシの代わりになります。使い方は、ウエスに適量を付けて、錆びている部分を擦り、サビを削り取ります。チェーンの中に粒子が残ると傷の原因になるため、研磨剤をよく洗い流すのがポイントです。
自転車チェーンのサビ取りグッズ3選
ソフト99 補修用品 サビ落としセット
メーカー |
ソフト99 |
タイプ |
サビ落とし剤 / 防錆剤 |
成分 |
サビ落とし液:非イオン系界面活性剤、リン酸 |
サビ止め油:鉱物油、防錆剤、石油系溶剤 |
車の補修用品を数多く手掛けているソフト99のサビ落とし剤とサビ止め油がセットになった商品です。サビ落とし剤は、化学的に成分配合され、効率的にサビ落としができます。キャップの内側に刷毛が付いていて細かいところの作業もしやすく、チェーンのサビ落としに最適です。
ピカール
メーカー |
日本研磨工業 |
タイプ |
研磨剤 |
成分 |
研磨剤(20% アルミナ系鉱物)、脂肪酸、灯油 |
ピカールは液状の金属研磨剤です。本来の目的は金属を磨き上げることですが、研磨剤が入っているため、
サビをこそぎ落とすのに使用できます。
チェーンに対する使用は、浸透潤滑剤でサビを浮かせた後、ウエスや柔らかい布に適量つけて錆びた箇所を磨き、きれいに拭き取ります。研磨剤は粒子が残っていると、チェーンを傷つけてしまうので、使用後のすすぎは入念におこないましょう。
ワコーズ チェーンクリーナー
メーカー |
ワコーズ |
タイプ |
チェーンクリーナー |
成分 |
石油系溶剤、非イオン系界面活性剤、防錆剤 |
ワコーズのチェーンクリーナーは、石油系のチェーン専用クリーナーです。石油系は浸透性が高く、水ですすぐ必要がありません。
また、非乾燥性のため、揮発性のクリーナーに比べて少量で洗浄でき、値段の割には優秀なコストパフォーマンスも持っています。防錆成分も配合されていて、日頃のメンテナンスに最適なクリーナーです。
自転車チェーンのサビの予防方法
自転車チェーンのサビを予防する最も効果的な方法は、水に濡らさないことです。外を走る自転車を完全に水分から遠ざけることは困難ですが、充分に対策を講じることで、サビからチェーンを守ることはできます。サビが進行すると取り去ることができなくなり、チェーンの交換が避けられません。
チェーンのサビ対策
チェーンに対して直接行えるサビ対策は、
小まめなメンテナンスです。頻繁にチェックをしてチェーンに異常がないか確かめましょう。万が一サビを発見しても、軽度のサビであるならば簡単に除去できます。
また、定期的に注油することでチェーンを保護し、サビからチェーンを守ることができます。オイルをチェーンから切らさず塗っていれば、日常的な湿気や走行時に付着する少々の水分に対するサビ予防は充分です。しかし、雨の中を走ったあとはオイルがチェーンから流れてしまいます。濡れたあとは完全に乾かしたうえで改めて洗浄と注油をおこないましょう。
錆びない保管方法
自転車を保管するうえで最も好ましい方法は、
室内保管です。屋内に自転車を置くことで、最大の敵である雨風から自転車を守ることができます。
どうしても家の中に置くスペースがなければ、できるだけ屋根のある場所で自転車を保管しましょう。屋外に保管する場合は、屋根があっても雨風が吹き込む可能性があり、自転車にカバーをかける必要が出てきます。カバーをかけて保管するときは、梅雨時は換気をおこない、湿気がこもることを防ぎましょう。
サビのないチェーンで快適な自転車走行を
自転車が水に濡れてしまうことは外を走る以上避けられません。特に、ロードバイクやクロスバイクのチェーンは、シティサイクルと違いチェーンカバーがなく、水分が付着しやすい構造です。せっかくの走行性能を台無しにしないために、サビ対策を充分に行い、きれいなチェーンで快適に自転車を走らせましょう。