筋肉痛が遅れて二日後にくるのはなぜ?気になる疑問を解決!
「次の日に筋肉痛が来ればまだ若いよ!」仲間とがんばって運動した後、このような会話をしたことありませんか? すっかり定番となっているこのやり取り。”ニ日後”に代表される〇日目の筋肉痛はなぜ起こるのか?二日後の筋肉痛は加齢と関係があるのか?二日後の筋肉痛のメカニズムや加齢との関係について調べてみました。
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公式ライター old_user_id: 176
二日後の筋肉痛は加齢のせい?
-筋肉痛の俗説-
代表的なものだけでも、
・若い人は筋肉痛が次の日に来る
・歳をとると筋肉痛はニ日後に来る
・さらに歳をとると3日後?
・筋肉痛はストレッチで治る
・筋肉痛はマッサージで治る
・筋肉痛のこない筋力トレーニングは意味が無い
などなど。
このような話は誰でも聞いたことのあるのではないでしょうか?
筆者も、運動後は次の日に筋肉痛が来ることもあれば2日後に来ることも、3日後に来ることもあります。
今回はその中から、『歳をとると二日後に筋肉痛がくる』という説を中心に、なぜ筋肉痛になるのか?なぜ二日後と言われるのか?次の日の筋肉痛とは違うのか?それぞれのなぜを解説していきたいと思います。
そもそも筋肉痛とは?
筋肉痛を正式に言うと『遅発性筋肉痛(DOMS)』
勘違いしていけないのは、二日後の筋肉痛を遅発性筋肉痛を言うのではなく、運動して一日目で来る、いわゆる「若い人の次の日の筋肉痛」も、遅発性筋肉痛だと言うことです。(運動中に痛むようであれば、肉離れ、筋挫傷といったケガも疑われます。)
ですので、”ニ日後に来る”場合は、通常の遅発性筋肉痛よりも更に遅れてくるということになります。
遅発性筋肉痛の概要
一日目、二日目に限らず、日常的に運動をしていない人や、運動をしていたとしても普段行わない不慣れなエクササイズを実施した場合に発症するとされています。あるいは、普段慣れている運動であっても、負荷を変えた場合、例えばウェイトトレーニングをいつもより高強度で実施した場合も発生する可能性があります。
なぜ筋肉痛になるのか?ひも解く三つの説
・・・と言いたいところですが、二日後の筋肉痛どころか一日目の筋肉痛のメカニズムすらいまだに解明されていないのが現状です。
これまでいくつか有力な説が発表されてきましたが、いずれも決定的なものにはなっていません。
以下にこれまで有力とされてきた、また現在有力とされている三つの説を紹介します。
①筋に貯まった乳酸説
高負荷の運動による疲労によって、疲労物質である乳酸(lactic acid)が筋中に貯まり、それが痛みを引き起こすという理屈です。
これがなぜ過去の説になったかと言うと、研究が進むにつれて、確かに運動直後は乳酸が溜まるものの、その後一時間程度でその乳酸の大半が除去されることがわかりました。
そのため、数日続く遅発性筋肉痛の原因には当てはまらないとして、今ではこの説は否定されています。普通に休息を取ってれば、次の日はもちろんのこと、言うまでもなく二日後には乳酸は除去されています。
ちなみに、なぜ筋肉痛はストレッチで治す、マッサージで治すといった俗説が広まったのか?の答えがこの説にあると言えます。
なぜかというと、ストレッチ、マッサージを行うのは血行を促進して溜まった乳酸を除去する、という理屈ですので、この説を前提とした場合の解決策として広まったと言えるでしょう。(一日目にせよ二日後にせよ、当然これは間違った解決法となります)
②筋の微細な損傷に伴う炎症反応説
筋肉の活動には大きく分けて3種類の活動があります。
・短縮性筋活動(コンセントリック)
・伸張性筋活動(エキセントリック)
・等尺性筋活動(アイソメトリック)
この中の伸張性筋活動(エキセントリック)が筋肉痛に直結するという説です。
なぜかと言うと、伸張性筋活動の場合は筋肉が伸ばされる方向に負荷がかかりますから、筋がより損傷しやすくなるからです。
伸張性筋活動によって筋肉痛が発生するケースというのは実際に多く報告されており、経験則としても学術的にも有力な説です。
しかしながら、動物実験等では筋線維の損傷がなくても筋肉痛が発生しているというケースも確認されていることから、これも決定的なものにはなっていません。
③筋肉痛の最新の学説
Kentaiニュース192号にて東京大学大学院教授石井直方氏がその三つ目の説を紹介していますので、そちらを引用します。
この動物モデルを用いた研究で、伸張性筋力発揮を繰り返した後に、確かに筋肉痛が起こること
がわかりました。
ところが、筋肉痛を示した動物の筋を調べると、筋線維の損傷も、炎症反応も起こっていない場
合が多く見られました。
その代わりに、ブラジキニン(BK)、神経成長因子(NGF)などの発現増加が見られ、特に、NGF
の抗体を与えてそのはたらきをブロックすると、筋肉痛の発生が抑えられることなどもわかりました。
これらの結果に基づいて、Mizumuraらは、次のような仮説を提唱しています:1)伸張性収縮によって
筋線維からATPやアデノシンなどが漏出し、これらが血管内皮細胞からBKを分泌させる;2)BKは
筋線維にはたらき、筋線維からNGFを分泌させる;3)NGFは筋内の機械刺激受容器(圧受容器)
にはたらき、その感度を上昇させる;4)その結果、通常では圧受容器を刺激しないような軽度の
圧迫や筋収縮にも圧受容器が過敏に反応し、痛みが生じる。この仮説は、まだ細かい点で検証の余地を残していますが、定説にまつわるさまざまな疑問点を
見事に解消してくれる点で、きわめて魅力的に思います。
この仮説が正しければ、筋肉痛と筋の損傷・炎症には直接的な関係はないということになります。
一方、過激な運動による筋の損傷が、別のメカニズムで筋肉痛を引き起こす可能性もあります。
「遅発性筋痛」にもいくつかの種類があり、より細かい分類が必要となってくるかもしれません。
二日後か否かに直接関わるかどうかは不明ですが、どうやら筋肉痛のメカニズムは複数あるというのが現在有力のようです。
加齢で本当に筋肉痛は遅れてくるのか?
『加齢によって筋肉痛が遅れて二日後にくる』は実証されていない
実は『二日後の筋肉痛』は研究レベルでは実証されていません。
川崎医療福祉学会誌に掲載された川岡氏ら(2006)の『遅発性筋肉痛および運動に伴う 筋損傷研究における文献的知見 被験者特性の違いに着目して 』によると、年齢差に着目した筋肉痛の研究Rothら(1999)、Manfrediら(1991)など複数あるものの、二日後に限らず、筋肉痛が遅れて発生する現象が確かめられたケースは無いようです。
いずれも二日後の筋肉痛だけに着目した研究ではないものの、加齢による二日後の筋肉痛はこれまでまったく確認されていないようです。
経験論としては”二日後にくる”どころか”三日後に来る”というケースもあるように思えますが、そもそも筋肉痛自体のメカニズムも解明されていないのですから、二日後、三日後の筋肉痛も解明できていないのは仕方ありませんね。
ちなみに一部では、負荷の高い運動をすると次の日に筋肉痛が来て、負荷の低い運動によって筋肉痛が二日後に来る。と紹介している場合もありますが、それは賛同しかねます。
なぜかと言うと、負荷の低い運動は日常的に行われているわけですから、常に二日後の筋肉痛が発生しないといけなくなります。さらに低い負荷の運動をしたら3日後に来るのでしょうか?
当然そんなことはありませんよね?
筋肉痛が二日後に来る理由(仮説)
ではなぜそのような加齢による二日後の筋肉痛という説が定番となっているのでしょうか?
あくまで一つの可能性ですが、なぜ筋肉痛が二日後に来るのか、という疑問に答える理屈が無いわけではありません。
それは、運動によって筋損傷が発生してから、炎症が起こり、発痛物質が筋膜に届くまでに時間差があり、これが次の日、二日後、三日後に繋がるのでは?という説です。
筋肉自体には痛みを感じる神経が無く、痛みを感じるには炎症に伴う発痛物質が患部に届く必要があります。
良く運動している人、あるいは慣れた運動の場合は、体がその動作に適応し、動作に関与する筋肉の毛細血管が発達しているため、発痛物質はより早く患部に到達します(次の日の筋肉痛)。一方運動不足の場合は毛細血管も十分に発達しておらず、血行も良くないため、発痛物質の到達が遅くなる、つまり二日後や三日後になる、というものです。
一般論でいうと、加齢とともに筋力は衰えていき、日常的にも運動習慣が十分ではなくなります。必然的に血行は滞りがちになり、毛細血管も発達していない状態になります。それによって筋肉痛が次の日ではなく、二日後、三日後に来るという現象が起こるのかもしれません。
ただし、これも学術的にはまったく確立しているものではありません。あくまでも二日後に筋肉痛が来る理由の、可能性の一つとして考えてください。
筋肉痛になってしまった場合は?
筋肉痛をはやく治す
・休息をとる
現に筋肉が損傷しているわけですから、安静にし、体に休息を与える、というのが基本になります。運動をした次の日からは無理をせず、筋損傷が回復する二日後、三日後まで安静にし、休息しましょう。
・アイシング
野球の投手が試合後に行っているように、アイシングは筋肉の炎症を抑える方法としてよく知られています。氷嚢などに氷と少量の水を入れ、患部に直に当てましょう(体温によって氷は溶けていきますので凍傷の心配はありません)。ゆっくり休息をとりながら、15分程度、感覚が無くなるまで冷やすのが一般的なやり方です。感覚が戻ったら再度繰り返し、次の日まで継続できれば理想です。休息とセットで取り入れましょう。
・栄養補給
筋線維の損傷からの回復を促すため、バランスの取れた食事でしっかり栄養をとりましょう。筋肉の素となるたんぱく質はもちろんですが、栄養の効率的な吸収や体調の維持のために、すべての栄養素を満遍なくバランスよく摂取することが大切です。次の日筋肉痛が起きてからではなく、その日のうちにバランスよく食事をとりましょう。
・十分な睡眠・休息
摂取した栄養をもとに、実際に体を回復させるのは主に睡眠時。特に22時~深夜2時の間が回復のゴールデンタイムと言われています。筋肉痛がある場合はしっかり睡眠をとり、体に十分に休息を与えましょう。
いずれの方法も、二日後の筋肉痛に限らず、痛みや炎症がある場合に有効な方法です。
無理をせず、休息を取りながら回復を図ってください。
筋肉痛を抑制するには
NSCAジャーナル2016.4.vol23.num3
Michael Randone『トレーニング経験のないクライアントに対して遅発性筋痛を抑制するために』に記載された抑制方法を紹介します。
①カフェインをエクササイズ前に体重1㎏あたり5mgのカフェインを摂取する。
(競技会前のカフェインの摂取はドーピング違反となる可能性があるので控えましょう。)
②分岐鎖アミノ酸(BCAA)を運動前後に摂取する。
③エクササイズ終了後、10分間の休息を取り、その後3分間のクライオセラピー(冷水に体を浸したり冷やしたりする水風呂のようなもの)を行う。
④エクササイズ前に10分~20分程度有酸素運動を行う。
以上の方法によって筋肉痛の発生を抑制することが報告されています。絶対に筋肉痛が無くなる、と断言できるものではありませんが、三日後に来ていた筋肉痛が二日後に、二日後が一日目に、一日目に来ていた筋肉痛の程度が軽く、となってくれるかもしれません。必要以上に休息時間が減らせれば、その分トレーニングに充てることもできます。
もし興味があれば実践してみてください。
筋肉痛が遅れて二日後くるのはなぜ?-まとめー
これまで説明してきた通り、これは俗説であり、基本的に次の日には筋肉痛が発生し、二日後にせよ、三日後にせよ、実際にそのような現象は確認されていません。
が、それはあくまでも学術的なレベルでの話。我々庶民レベルの経験則としては一日目の筋肉痛も、二日後の筋肉痛も、三日後の筋肉痛も確かに存在すると言えるでしょう。
そもそも、実際の二日後の筋肉痛という現象よりも、久しぶりの運動でお互いが楽しい時を過ごし、その際の休憩時の決まり文句として「二日後の筋肉痛」が定着し、定番化してきたのかもしれませんね。
皆さんも二日後の筋肉痛を恐れず、積極的に運動をして、適度に休息を取り、爽快感を味わいましょう!
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