偽9番とは?偽9番のポジションと戦術的な活用方法を解説!
サッカーではゼロトップシステムという攻撃的な戦術がありますが、その中心を担うのが偽9番です。ストライカーとしてゴールを狙うことはもちろんですが、高いテクニックでゲームメイクをすることも求められます。また、偽9番を機能させるためには、チーム戦術の整理も必須となります。
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公式ライター Activel_director
偽9番とは?
もともと、サッカーで9番とは最前線で得点を狙うセンターフォワードを意味します。しかし、偽9番は最前線で得点を狙うだけではなく、中盤まで下りてきてゲームの組み立ても行います。
フォワードでありながら、そのポジションを離れゲームメイクもすることから偽9番と言われます。そして、偽9番を用いたフォーメーションをゼロトップと言います。
偽9番のプレースタイル
ストライカーとしてゴールを狙う
純粋な9番の選手に比べて多くのことが求められる分、ゴールへの意識が薄れてしまう場合もあります。
多く役割が求められるが故に、もっとも大切であるゴールへの意識はセンターフォーワードと同等、もしくはそれ以上に求められます。
中盤に下りてゲームメイク
サッカーではセンターフォワードは体が大きく、パワフルな選手が起用されることも多くあります。しかし、偽9番はそれだけではなく、ゲームメイクを行うためのサッカーセンス・テクニックも必要です。
偽9番を行うメリット
中盤の数的優位の形成
中盤で数的優位を作り出すことができれば、ボールポゼッション率を高めゲームの主導権を握りやすくなります。
例えば自チームと相手チームのフォーメーションが433同士だとしたら、中盤の中央の人数は3v3です。そこで偽9番の選手が加わることで4v3の数的優位を作り出すことができ、ポゼッションしやすい状況を作り出すことが可能です。
センターバックを迷わせる
偽9番が中盤に下りた時、相手センターバックはそのまま偽9番のマークについていくのか、それとも最終ラインに残るのか迷います。
センターバックが偽9番についていけばディフェンスラインにスペースが生まれてしまい、危険な状況になります。逆に偽9番にセンターバックがついていかなければ中盤で数的優位を作られ主導権を握られます。
センターバックは非常にむずかしい決断を迫られ、そこでの判断ミスは致命的なミスにもなりかねません。
偽9番の選手をフリーマンとしてプレーさせられる
攻撃センスのある選手をポジションに固定して役割を制限するよりも、自由を与えてより多くボールに関わらせることで個人・チームの力を最大化します。
フリーでポジションにこだわらずあらゆる場所に顔を出すことで、相手ディフェンスもマークをすることが難しくなります。相手守備陣を撹乱させることでマークのズレなどが生じ、味方の選手もプレーしやすくなります。
偽9番に求められる能力
一部の能力が優れているだけでは不十分で、全ての能力が高水準であることが条件です。
ポジショニングセンス
いつゲームメイクのために中盤まで下りていき、いつ得点を奪うために最前線へ出ていくべきか正しい判断が求められます。
偽9番が下りるべき時に下りて中盤を助けなければ、味方は相手からプレッシャーを受けてボールを失ってしまいます。
逆に点を取り行くべきシーンで最前線に飛び出さなければ、ボールを保持するだけでゴールを奪うことができません。
ゲームメイク力
偽9番がせっかく中盤に下りてきたとしても、そこで有機的にポゼッションに加わることができなければ攻撃のリズムは悪くなってしまいます。
ポゼッションに加わる時もただボールを回すだけでは不十分です。ポゼッション率を高めつつ、どのようにボールを動かせばゴールを奪うことができるのか考えてゲームメイクする必要があります。
決定力
決定力が高い選手でありながら、中盤の組み立てなどにも大きく貢献できる選手が偽9番を務めます。決してゲームメイカーの延長線上に偽9番があるわけではありません。
偽9番も純粋な9番同様に高い決定力でゴールを奪い、チームの勝利に貢献することがとても大切な役割です。
偽9番の難点
偽9番を務めることができる選手がいない
どちらかが優れていれば良いのではなく、両局面で質の高いプレーが求められるため、偽9番を務めることができる選手は多くありません。
十分な能力を有していない選手が偽9番の役割を務めると、フィニッシュワークもゲームメイクもどっちつかずになり、プレーの質が逆に下がります。
能力のキャパシティーをこえてどちらも中途半端になる様なら、どちらかの役割に専念する方が個人もチームもパフォーマンスは維持できます。
1人に依存したシステム
偽9番が厳しいマークに会い、十分なパフォーマンスを発揮できなければ、チームの攻撃は機能しなくなってしまいます。
また、偽9番が怪我などで欠場する場合、代役を立てることは難しく、システム自体の変更を余儀なくされる場合もあります。
その様な状況になると、普段積み重ねてきたものを十分に発揮できなくなります。
1人を生かす戦術の整理
比較的自由にプレーする偽9番のために、チームとしての決まりごとがなければ機能しません。
例えば偽9番が下りてきた時に、代わりに相手の背後を狙う選手は誰なのか決めておかなければ得点を奪いにくくなります。
また、トップレベルになればなるほど誰かのために役割を決められることを嫌がる選手もいます。そうした選手をうまくチームに組み込むマネジメントも必要です。
乱れる守備バランス
偽9番はポジションのバランスをあえて崩し、局面で数的優位を作りゲームの主導権を握ることが狙いです。しかし、局面で数的優位を作り出そうとすれば必ず人が足りないエリアがでてきます。
例えば、ポゼションに加わろうと中盤まで下りた時にボールを失えば、相手センターバックはフリーとなっています。そこで相手センターバックい精度の高いロングボールなどを蹴られてしまえば一気にピンチになってしまいます。
代表的な偽9番とは?
今回紹介する3人は総合的に高い攻撃能力を備えつつ、自らの特筆する武器を駆使して偽9番として活躍し、ゼロトップシステムをチームとして機能させました。
リオネル・メッシ
彼の最大の武器は何と言っても切れ味鋭いドリブルです。中盤にするすると下りていきスペースを見つけ、そこでボールを受けるや否やドリブルを開始し、相手守備陣を翻弄します。かといってメッシ選手はドリブルだけの選手ではなく、パス・シュートを行う状況判断も素晴らしく彼を止めることは困難を極めます。
その才能が圧倒的すぎるため、現代サッカーおいて守備のタスクを免除されている稀有な存在です。
フランチェスコ・トッティ
トッティ選手は卓越したテクニックに加え、強靭なフィジカル能力を持っています。厳しいマークを受けても、フィジカルコンタクトでボールを守り簡単に失いません。トッティ選手がボールを失わないからこそ、味方の選手はトッティ選手にボールが渡れば迷いなく相手の背後に飛び出すことができます。
トッティ選手が偽9番として大車輪の活躍を見せ、彼の所属するローマは躍進しました。
セスク・ファブレガス
セスク選手は18歳の若さでイングランドの名門アーセナルのボランチのレギュラーとして活躍をしました。
そうしたキャリアで培ったゲームメイク力を生かし、偽9番として活躍の幅を広げます。彼が偽9番に入ることで中盤の構成力・ポゼッション力は格段に上がります。クラブチームだけはなく、スペイン代表でもセスク選手を生かしたゼロトップシステムが使われ、チームを牽引しました。
偽9番を生かすフォーメーション・戦術
チームとして偽9番を機能させやすいシステムの「433」と「4231」を解説します。
433
偽9番が下りた時に変わって相手の背後を狙うのが両ウイングフォワードです。
見方によっては、開き気味で2トップが構えるダイヤモンド型の442にも見えます。
偽9番が中盤に加わりポゼッションを高めます。それに対応しようと相手センターバックがマークに出てくれば両ウイングフォワードが背後を取るためにランニングを行います。
4231
433と異なり偽9番が下りてきた時に、代わりに背後を狙うフォワードがいなくなってしまいます。それを補うためにトップ下の選手や両サイドハーフが偽9番と入れ替わるように背後へ飛び出します。
偽9番の下りる動きにディフェンスラインがつられてラインをあげれば、相手の背後には広大なスペースが生まれます。中盤の選手がそのスペースにタイミングよく抜け出すことができれば、決定的なチャンスを作り出すことが可能です。
偽9番は諸刃の剣
ハマれば相手をポゼッションで圧倒するような魅力的なサッカーができますが、うまく機能しなければその戦術が敗因にもなりえます。
偽9番は危なっかしくも魅力的な戦術であり、その特性がゆえに多くのサッカーファンを虜にする戦術なのかもしれません。
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