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トータルフットボールとは何か?戦術理論を考えてみよう

トータルフットボールとは何か?戦術理論を考えてみよう

様々なサッカー戦術があるなかで、世界的に認知されているトータルフットボール。トータルフットボールと一言で言ってもその内容まで詳しく知る人は意外に少ないはず。そこで今回はトータルフットボールとは何か?と題して、戦術理論を考えてみたいと思います。

2021.12.16 サッカー

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トータルフットボールの歴史

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トータルフットボールの歴史とは、1974年に西ドイツで開催されたサッカーワールドカップにさかのぼります。

この大会で優勝候補とされていたのは開催国であり、ベッケンバウアーを要した西ドイツでした。西ドイツが採用していた「リベロシステム」に対抗する形で世界に衝撃を与えたシステム、それがヨハン・クライフ要するオランダ代表のミケルス監督が採用した「トータルフットボール」でした。

このトータルフットボールが後のバルセロナサッカーを筆頭に世界のサッカーへ多大な影響を与え、様々なフォーメーションが確立されることになります。

トータルフットボールとなどのような戦術なのか?

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それではトータルフットボールとはサッカーにおいてどのような戦術なのでしょうか?一般的には「ポジションが流動的で、且つ全員攻撃全員守備」というような認識で共通していますが、トータルフットボールを更に突き詰めて言えば以下の通りです。

トータルフットボールの定義

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① ボールポゼッションを重要視する
② ボールを奪われたらすぐさまハイプレス
③ スペースを作り利用する
④ ポジションチェンジを多用する

これらの定義を軸に、トータルフットボールを様々なチーム戦術に応じて落とし込むわけです。トータルフットボールを簡単に言うならば、今までの攻撃守備という完全分業制を、全員攻撃・全員守備という流動的なものにしたと言うことになります。

① ボールポゼッションを重要視するとは?

サッカーにおけるオフェンス戦術であるボールポゼッションとは、縦へのロングパスや大きなサイドチェンジを行わず、細かいパスワークでボール支配率を上げるということで、相手にボールを奪われなければ失点することは無いとの考えに基づきます。

全員でコンパクトにパスを繋ぐ、トータルフットボールの代名詞と言われています。

② ボールを奪われたらすぐさまハイプレス

細かいパスワークを主体としているため、ディフェンスラインは全体的に高い位置を取ります。そしてボールを奪われた際にはスムーズに守備陣形をコンパクトに保ち、チーム全体で連動したハイプレスを展開します。チーム全体というところからトータルフットボールの一つと呼ばれます。

トータルフットボールではオフェンス時の細かいパスワークとディフェンス時のハイプレスの双方が必須ですが、細かいパスワークを必要とせず、ハイプレスのみを採用したのがサッキ監督が率いたACミランでした。

③ スペースを作り利用するとは?

例えばオフェンス時、センターフォワードの選手がペナルティエリアから離れることによりマークしている相手ディフェンダーもつられるように移動します。

その空いたスペースにスルーパスを出したり、別のポジションの選手が入ったりする動き、チーム全体で連動してスペースを作る動き、まさにサッカーにおけるトータルフットボールです。

④ ポジションチェンジを多用するとは?

それぞれのポジションの選手が相互に動き、各ポジションを移動することによって相手ディフェンスを混乱させます。

センターフォワードのポジションに右ウイングがポジションチェンジし、空いた右ウイングのポジションを右サイドバックが埋めるというように、チームが連動してポジションチェンジを繰り返す事にマークを外していきます。

選手全員が様々なポジション適正能力を備える必要がりますが、これもまさにサッカーにおけるトータルフットボールと言えます。

細かいパスワークとハイプレスの融合

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このようにトータルフットボールとは、ディフェンス時のハイプレスにオフェンス時の細かいパスワークを融合したものという事がわかります。ではサッカーにおけるハイプレスとはどのようなものなのでしょうか?

ハイプレスサッカー

イタリア代表の総称が堅実な守備である「カテナチオ」と呼ばれ続けたのは有名な話ですが、プレッシングのみに特化したチームがイタリアセリエAのACミランのサッカーでした。

このハイプレスサッカーはサッキ監督によって作り出されたもので、もともとゴールを守るための理論であったプレッシングサッカーを更に進化させたものです。

守備的なサッカーの考えから高い位置から積極的にボールを奪いに行くという攻撃的なサッカーの考え方への変化が特徴です。

変貌を遂げるトータルフットボール

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このサッカーにおけるトータルフットボール理論は世界でも名を馳せるようになり、様々な監督により様々なトータルフットボールへと変貌を遂げています。

トータルフットボールはどのような監督により、どのようなサッカーに変貌を遂げているのかを見ていきましょう。

クライフのトータルフットボール理論

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クライフによるトータルフットボールの特徴は、ポジションチェンジを多用しないことにより、スペースを最大限活用し、各ポジションにスペシャリストを置くことです。

このサッカー戦術理論をベースに、フォーメーションは3-4-3を採用、センターフォワードから両ウイング、両サイドバック、ゴールキーパーとピッチを最大限に利用して囲むような陣形を引き、中央の4人は外側の選手達とショートパスをつなげるような適切なポジショニングをとります。

こうすることにより相手がゾーンディフェンスで対抗してきた場合は外側だけでボールを回せ、マンツーマンで対抗してきた場合はセンターフォワードへボールを集めて1対1の局面を作ることができます。

グァルディオラのトータルフットボール理論

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グァルディオラのトータルフットボールは確認できる限り、2通りの理論があります。

【1つ目の理論】
特徴の1つは、4-3-3のフォーメーションを採用し、ポジションチェンジを多用する点です。

センターフォワードが後ろに下がり、空いたスペースを右ウイングが埋め、右ウイングに右サイドバックがポジションチェンジし、右サイドバックに右センターバックがポジションチェンジするという形で最終的には中盤を厚くする3-4-3のフォーメーションになり、ポゼッションサッカーを多用するシステムです。

そしてポゼッションサッカーを多用する、つまりボールを最終ラインでも回すことから、必ずディフェンスの枚数が優位になることを目的にしています。

【2つ目の理論】
もう一つが基本的にはポジションチェンジは行わずに、外側の陣形は崩さず、センターフォワードとオフェンシブミッドフィルダーだけで激しくポジションチェンジをすることで相手センターバックの裏を突く方法です。

岡田ジャパンのトータルフットボール理論

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イビチャ・オシムが病気のため急きょ代表監督を退いた後を受け持ったのが岡田監督でした。

この岡田監督の戦術がハイプレスサッカーとポゼッションサッカーを融合したオーソドックスなトータルフットボールを採用しています。当時はハイプレスサッカー・ポゼッションサッカーのトータルフットボールといえばバルセロナと言われるほどバルセロナの代名詞とされた戦術でした。

岡田監督も陣形をコンパクトにし、ボールを奪われたらすぐさまプレスをかけて奪い返し、奪い返したら細かいパスで攻撃へ展開する戦術を取り入れました。しかしながら、バルセロナのような個人技術があるわけでもなく、アジアではある程度通用しても世界で通用することはありませんでした。

ハリルジャパンのトータルフットボール理論

ハリルホジッチ監督に代わってからは、ハイプレスサッカー・ショートカウンターサッカーという形に代わります。フォワードやウイングはハイプレスを仕掛けてボールを奪い、ボールを奪った後はオフェンスへの素早い切り替えからの、高い位置から縦への素早いショートカウンターを敢行します。

昔までのフォワードは戻らない・ディフェンダーは上がらないという役割分担が無くなり、フォワードにも守備を求め、ディフェンダーにも攻撃参加を命じるあたり、トータルフットトボールと言われる所以です。

トータルフットボールは理想論?

確かに全員攻撃・全員守備、様々なポジションの適正能力の必要性、ハイプレスサッカー・ボールポゼッションサッカーと、オフェンス・ディフェンスでこれだけの事を選手は求められるわけですから、個々の能力が高いことがトータルフットボールという戦術には必要条件と言えます。

メッシやイニエスタ、ブスケツやスアレスなどタレント揃いのバルセロナだからこそ、取ることができる戦術とも言われています。

更にトータルフッボールは固定されたフォーメーションの完全分業制と違い動きが多く、フォーメーションも崩れやすいので非効率的と言われます。

ハリルホジッチ監督がハイプレスサッカー・ボールポゼッションサッカーより、ハイプレスサッカー・ショートカウンターサッカーという戦術を採用したのは、このことを理解しているからと言われています。

トータルフットボールとはメディアが作りだした言葉?

先の1974年のワールドカップでオランダ代表が採用した、それぞれがポジションをめまぐるしくチェンジし、マンツーマンディフェンスが主流だった当時としては、相手チームは大混乱に陥ったこのシステムをトータルフットボールと呼ぶようになったのはメディアがつけたからです。

それほど衝撃的なシステムだったということです。

決勝で対決した西ドイツとオランダですが、結果としてオランダは敗れています。しかし優勝した西ドイツより、敗れたオランダのトータルフットボールのほうが注目された点からもどれだけ衝撃的だったのかがわかります。

トータルフットボールの終焉?

このトータルフットボールが世界各地で注目され、様々なクラブや代表チームでも採用され始めましたが、それに対抗しようとするシステムも考案されていきました。それがマンツーマンディフェンスに代わるゾーンディフェンスです。

マンツーマンでなければポジションチェンジをしてもディフェンダーは動かないのでトータルフットボールの良さが消されるわけです。

最近ではゾーンディフェンスが主流になっていますが、このような経緯があったわけです。そこでトータルフットボールは終焉を迎えたと言われるようになります。

しかし、センターフォワード・両ウイング・両サイドバック・ゴールキーパーの6人でピッチをワイドに使えば、ゾーンディフェンスはその中にあるのでポゼッションが可能になります。そしてゾーンディフェンスがそれにつられてワイドに広がれば中の5人とショートパスがつながるようになります。

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