硬式テニスでのスライスサーブの打ち方と練習法、よくあるお悩みポイントと解決法、初心者でも上手く打つコツをご紹介します。硬式テニスのスライスサーブの打ち方は、自然に身体を使え、筋力を必要としませんので、初心者の方や非力な女性や高齢の方でもコツをつかめば十分に打てるサーブです。
スライスサーブとは?
今回は硬式テニスのスライスサーブの打ち方について、初心者の方でも上手に打てるようになる練習法とコツについてご紹介しましょう。
スライスサーブの特徴
硬式テニスのスライスサーブの打ち方は、名前の通りテニスボールをナイフで削ぐ(スライスする)ように打ちます。打ったボールの特徴としては、右打ちの方ならテニスボールの右側を削ぐように打ちますので左に曲がりながら飛び、バウンドしてから左方向に滑るようにボールが回転し、バウンドも高くなりません。フラットサーブやスピンサーブに比べ、自然に身体を使え、力を必要としない打ち方ですので、初心者の方や女性や高齢の非力な方でもコツをつかめば十分に打てるテニスの基本的なショットの一つです。
スライスサーブの3つの長所
・非力な選手でも打てるサーブ
筋力的な負担が少なく、パワーがなくても打てるショットなので、コツさえつかめば初心者の方や女性や高齢者にも上手に打てるようになるサーブです。
・無理せず自然に身体が使える打ち方で身体に楽
テニスボールを投げるような感覚で、無理な動きが少ないため、コツをつかめば初心者の方々にも身体に楽なサーブです。
・セカンド(第二)サーブとして使いやすいサーブ
理想のセカンドサーブは、相手から攻撃されにくく、フォールトしにくいサーブです。スライスサーブは曲がりながら飛び、バウンドしてから滑るので相手から攻撃されにくいサーブです。
スライスサーブの実践での長所
・コートサーフェイスによってはさらに効果的なサーブ
例えば滑りやすい砂入り人工芝や、ハードコート、カーペットコートなどは、スライスサーブがバウンドしてから低く滑るため、相手が返球しにくく効果が倍増します。
・風が強い時に使えるサーブ
風が強い時にはトスアップが高いと風に流され打ちにくくなります。スライスサーブは、トスを多少高く上げずに打てるので風の影響が比較的少なく済みます。
スライスサーブの試合で有利な点
・滑るスライスサーブはオープンコートを作りやすい
シングルスでは、右利きならデュースサイドで左に滑るサーブ、左利きならアドサイドで右に滑るサーブは、相手をサーブレシーブのためにコート外に追い出すことができます。相手を追い出してオープンコートを作ることで、ファーストボレーで決めたり、その後試合を有利に展開したりすることができます。
・バウンドしてから低く滑るため、相手は低い打点から持ち上げるショットになる
ダブルスでは、相手がボールを持ち上げるピックアップショットを打つ時にはボールが浮くので、ポーチのチャンスとなります。サーブで相手レシーブを浮かせると、味方の前衛がポーチしやすくなりポイントの確率が高まります。
スライスサーブの打ち方
それではスライスサーブの打ち方について初心者の方々にもわかりやすくご説明しつつ、ポイントをチェックしていきましょう。基本的に右利きの方を対象に打ち方の説明をしますので、左利きの方は左右裏返して解釈してください。
グリップ(ラケットの握り方)
コンチネンタルグリップ
まずグリップですが、サーブに共通のグリップとして使われるコンチネンタルグリップがおすすめです。イメージで言いますと、台所でものを切る時に使う包丁の握り方です。テニスラケットを地面に対して立てて持ってください。
初心者の方には最初はストロークを打つ時のグリップと違って違和感があるかもしれません。ただし、このグリップの方がスライスの回転がかけやすく、初心者の方が今後学ぶサーブ&ボレーの連続ショットなどでもスムーズに打ちやすいので、初心者の方が今後上達しやすいようにということも考えて、サーブでは初めからこのコンチネンタルグリップを使って練習してみることをおすすめします。
スタンス(足幅)
スタンスの位置
スタンスは、スライスサーブだけでなく、フラットやスピンなどのサーブに共通ですが、ネットに対して身体を横向きにし、肩幅より多少広めに、両足のつま先を結んだ線の延長線上に目標があるようにスタンスを取ります。デュースサイドでは右足が多少前(肩が開く感じ)、アドサイドでは右足が後ろに引けた(肩が内側に入った感じ)のスタンスになります。
トスアップ(テニスボールの投げ上げ)
サーブはテニスラケットを持たない方の腕でテニスボールを投げ上げ、テニスラケットを持つ方の腕で打ちます。スライスサーブでは、テニスボールを投げ上げる際には、右斜め前方に上げます。高さは右腕を高く伸ばした高さよりテニスボール2個ほど高めに上げます。
インパクト(打点)
スライスサーブの回転
スライスサーブの打点は右斜め前方になります。高さは右腕が伸び切った高さから多少低くても良いです。サーブでもストロークでも、打点はショットを決めるカギとなります。ご自分で打ちやすい打点があると思いますので、練習して打ちやすい打点を自分のものにしてください。
スライスサーブは、インパクトでテニスボールの右側を削るように打ちます。ちょうどテニスボールを地球と見立てると、赤道あたりをラケットで「シュッ」と風を切る音がするぐらいの速度で削り取るイメージです。
スイング
スライスサーブのスイングは右斜め前方にテニスラケットを振り下ろします。右斜め「前方」というのがポイントで、フラットサーブはテニスボールを打つ方向にラケットを振り下ろすのですが、スライスサーブはスイングの方向とテニスボールの飛ぶ方向が違いますので注意が必要です。前方にしっかりと振り下ろすほど、回転がかかって滑るスライスサーブになります。
リズムについて
サーブのリズムの基本は「1,2,3」で、(1)トスを上げ、(2)テニスラケットを担ぎ、(3)テニスボールを捉え最後まで振り切ります。スライスサーブでの(2)(3)の腕の動きは手刀で空を切るイメージになります。または、(1)と(2)を同時に行い、(3)で振り切る、「1,2」のリズムで打つ方法もあります。
サーブでは左腕の動きと右腕の動きが独立して違う動きをするので、初め慣れないとタイミングが取りにくいと思います。そんな時には、最初からテニスラケットを担いだ状態で、[1]トスを上げて[2]振り切る「1,2」のリズムで打ってみることをおすすめします。この「1,2」のリズムですと、右腕を担いだ状態で固定できるので、左腕のトスアップだけに集中できるという利点があります。サーブの導入時点で紹介する練習法です。
サーブは非常に感覚的なショットですので、久しぶりにテニスをする時に勘が鈍っていて上手く当たらなかったり、試合の途中でも急に入らなくなったりすることがあります。そういったときにシンプルな「1,2」のリズムを試してみても良いと思います。数々の大会に優勝したアガシ選手が一時期、「1,2」のリズムでサーブをしていたことがありました。ご自分の打ちやすいリズムを身に付けましょう。
スライスサーブの打ち方の練習法
スライスサーブに効く打ち方の練習法をご紹介しましょう。
グリップを覚える練習①
スライスサーブはグリップがポイントになります。コンチネンタルグリップはサーブの基本のグリップですが、特にスライスサーブの回転がかけやすく、このグリップを覚えておくことがスライスサーブのカギになります。
グリップを覚える練習法の一つには、包丁を握る持ち方でテニスラケットを握り、テニスボールを上向きにラケットフレームのエッジ(端)でついてみましょう。最近は厚いフレームのテニスラケットが多いので、比較的楽につくことができると思います。安定して連続して上につくことができない場合は、きちんとテニスラケットが握れていないことが原因だとわかります。
グリップの練習 エッジでついてみる
グリップを覚える練習②
次に同じ握り方で、ラケットフレームのエッジでテニスボールを下向きについてみましょう。下向きでも安定して連続してできるように練習してみてください。できないようでしたらきちんと握れていないことになります。
打点での感覚を覚える練習
エッジでのボールつきが安定してできるようになったら、同じグリップで、バウンドして上がってくるテニスボールをテニスラケット面で削るようにカットしてみてください。その感覚がスライスサーブの打点での感覚になります。かすりながらもしっかり当てる、微妙な感覚が分かってきましたらグリップについては完成です。
腕の使い方を覚える練習
テニスでは各ショットで腕の動きが重要です。手首の使い過ぎは安定感を損ねますが、上手く使うとボールにパワーも生まれ効果的です。また肘の曲げ伸ばしもボールにパワーとスピンを与えます。
スライスサーブでの腕の動きは手刀で相手を切る感覚になります。肘を曲げて「シュッ」と風を切るように手を振り下ろす、それだけです。手首は無理に使わないのがコツです。この練習は普段から場所を気にせず行うことができます。
ビニールボールを使った練習
海水浴で使われる、すいかのデザインや、サッカーボールのデザインのビニールボールを用意してください。これらのデザインですと非常にボールの回転が分かりやすく、初心者の方でも回転のチェックに最適です。テニスラケットでビニールボールの右端をカットするように打ちますと、ビニールボールの回転がよく見え、テニスボールを打つよりも回転が確認できます。しっかり回転がかかるラケットの使い方と感覚を覚えてください。
ビニールボールを使った練習
トスアップの練習
スライスサーブでのトスアップは、右斜め上方になります。トスアップしたボールの落ちる位置の地面にラケット面を置き、トスアップしたテニスボールを安定してラケット面に落とす練習をしてみてください。筆者は、初心者の方のサーブが安定して入らない原因は、トスアップが半分、打点とスイングが半分と考えていて、トスアップはそのくらい重要なので、安定してラケット面にテニスボールを落とせるまで練習してみてください。
トスアップの練習
打点の位置をつかむ練習
左手にも1本テニスラケットを持って左手を高く伸ばします。右斜め上方がスライスサーブの打点です。そこに左手のテニスラケット面が来るようにセットして、右手のテニスラケットで左手のラケット面をノックするように打ってみてください。繰り返しやることでスライスサーブの打点の位置をつかみやすくなります。
キャッチボール
サーブの練習にはキャッチボールが効果的です。ボールを投げる動作は、テニスのサーブのスイングによく似ているからです。初心者の方や、特に球技をあまりやってこなかった女性などは、肩が回らずテニスボールを遠くに投げることができないことが多いです。スライスサーブでは、野球でいうスリークォーター(4分の3)の斜め右から投げ下ろすフォームでのキャッチボールを繰り返すと、スイングの練習になりますので、初心者の方は最初は相手との距離を短く始め、徐々に遠くして、安定して目標である相手に投げられるように練習してみてください。初心者以外でもサーブのコントロールが安定しない方にも効果的です。また、テニスボールよりも少し重いボールを投げると、肩の強化にもなり併せて効果的です。
スライスサーブの打ち方のコツ
以下によくあるスライスサーブでの初心者の方々のお悩みポイントとその解決策、打ち方のコツを書いてみました。困った時のチェックに参考にしてみてください。
回転がかからない
グリップはコンチネンタルグリップになっていますか?初心者の方がサーブでも使いたがるストロークでのグリップ(主にイースタンまたはセミウエスタングリップ)ですと、当たりが厚くなり、スライス回転にならず、回転がかかりにくいです。コンチネンタルグリップを使うことが回転がかかりやすくなるコツになります。ちなみに、ラケット競技の世界では、当たりが厚い、薄いという表現をすることが多くあります。しっかり当たることを厚く当たる、かすれたような当たりは薄く当たると言います。スライスは後者の薄い当たり方になります。
腕の使い方は手刀を切るような使い方になっていますか?「シュッ」と風切る音がするくらいの腕の使い方をするのが回転をかけるコツです。ただし、初心者の方は手首だけで、いわゆる切りすぎになることが多く、ボールが前方に飛びません。そこで大切になるのはスイングになります。
スイングは右斜め前方に振れていますか?スライスサーブでは、スイングの方向とボールの飛ぶ方向が違ってきます。スイングの方向は右斜め前方というのがコツになります。また、初心者の方に多いのは、ボールの行方が心配になり、ラケットを途中で止めてしまうことです。初心者の方にはボールの行方は気にせず、身体全体で最後まで振り切ることもコツです。振り切ることで腰回りの筋肉が使え、強い回転がかかるようになります。
ボールが前に飛ばない
ラケットを右斜め前方に振り切っていますか?ボールの回転と、前に進む推進力を調整しないといけません。スイングの前方への振り切りが足りないとボールの推進力が得られず、飛距離が足りなくなります。また、手首を使いすぎて回転がかかりすぎていることも原因かもしれません。しっかりと腕を使って前方に振り切ることがコツになります。
サーブが入らない、安定しない
サーブの狙いは正確ですか?スライスサーブは横に(右利きでは左側に)流れるように飛ぶため、流れる分を予想して狙いは気持ち右寄りにするのがコツです。風がある日などは流れる分を予測しにくいため特に注意が必要です。
トスアップは安定して同じ位置に上げられていますか?毎回違う位置に上げているのでは安定したサーブは打てません。スライスサーブではトスアップは右斜め前方です。あと、初心者の方に多いのは、トスアップの際に手首を返してしまうことです。手首を返すと安定してボールを上げることができません。左手にコップを持って、コップの中の水をこぼさずに上に上げるようにイメージするのがコツです。手首を使わずにトスアップができるようになります。
スイングは安定していますか?同じスイングで打てるようにならないと安定したサーブは望めません。そのためには初心者の方にはスイングを固めるキャッチボールが上達のコツになります。キャッチボールで安定して相手に返球できる練習を繰り返してみるとよいでしょう。
手首を使いすぎていませんか?手首の使い過ぎはコントロールが安定しない原因になります。
バウンドしてから滑らない
止めずにしっかりと最後までスイングを振り切っていますか?初心者の方にはボールの行方を心配してスイングを途中で止めてしまう方が多いです。ストロークでも同じでしっかりと最後まで振り切ることがコツで、そうすることでボールに回転がかかり、パワーも乗ることになります。
テニスのスライスサーブの打ち方のまとめ
硬式テニスのスライスサーブの打ち方と練習法、よくある初心者の方々のお悩みポイントと解決法、打ち方のコツをご紹介しました。初心者には練習あるのみ、とよく言われますが、ただ間違った打ち方を考えなしに何度も繰り返すのは、打ち方に変なクセがついて無駄な努力になることもあります。初心者の方だからこそ、打ち方を良く学び、上手くコツを捉えた上で、正しい基本の打ち方を繰り返し練習して身に付けることをおすすめします。最後までお読み頂きありがとうございました。