卓球のチキータは、現代卓球を語るうえで欠かせない技術であり、台上で先手をとれるのが特徴です。チキータの打ち方は、ヒジを高く上げることと足の運び方が重要になります。さらにチキータを習得するための練習方法は、多球練習とチキータを取り入れたシステム練習がおすすめです。
チキータとは?
卓球のチキータとは、手首を利かせて横回転を加えたバックフリックです。台上技術のひとつとして急激に進化してきた技術であり、卓球の技の中では比較的新しいものになります。台上技術ですが非常に攻撃的で、レシーブから先手をとれるのがチキータの特徴です。
チキータの意味
チキータの名前は、チキータバナナのように曲がるという意味で名づけられています。台上のバックドライブやフリックがチキータと呼ばれることもありますが、本来は強い横回転が加わってバナナのように曲がるバックフリックを指します。
チキータの誕生
一番最初にチキータを考案したのは、チェコ代表として世界に名をとどろかせた
ピーター・コルベルです。主な成績は、1996年のアトランタオリンピックで男子シングルス4位に入賞しています。2000年代に入ってからも、世界選手権で中国代表選手に勝利するなど、長い間世界のトッププレーヤーとして活躍しました。
コルベル選手がチキータを生み出したのは、10代の頃に遊びの中で習得したとされています。
チキータの種類
【卓球動画】チキータ 2種類の使い分け【卓球スクール・タクティブ】
チキータの種類は、
スピード系と
回転重視の2種類が存在します。スピード系は非常に攻撃的な技術ですが、ミスが増えやすく精度を上げるには時間がかかるといえます。
回転重視で打つと安定感は増すので、チキータを覚えるときはまず回転をかけることを意識してみましょう。
スピード系チキータと台上バックドライブの線引きは難しく、ほぼ同じと考えても間違いではありません。たとえばテレビ中継でも、バックフリックや台上バックドライブがチキータと紹介されることがあり、現在チキータという言葉は幅広い技術に使われているといえます。
チキータの打ち方・やり方
チキータの打ち方で重要なのは3つです。
・正しいフォーム
・足の運び方
・ボールの捉え方
チキータを習得しようと考えるとき、どうしても上半身に目がいきがちですが、腕や手首だけではなく足の運び方も非常に重要です。
正しいフォーム
正しいフォームを身につけるためには、
ヒジを引き出すようにして高い位置に持っていき、手首を曲げて打球準備するのがポイントです。ヒジを高い位置にすることで、バックスイングのスペースをつくることができ、強い回転を加えやすくなります。
さらに前傾姿勢で構えることで、体の正面により広いスペースをつくることが可能で、打球後はラケットを右側(右利きの場合)に持っていくように振り抜きます。
足の運び方
チキータの足の運び方は、相手が打ったボールの落ちてくる場所に移動して、右足(右利きの場合)を卓球台の中にしっかりと入れるようにします。足をボールの近くに運ばずに腕を伸ばすだけでは、安定して力強いスイングができません。威力と安定を確保するには、足を使って体をボールに寄せる意識を持ちましょう。
ボールの捉え方
ボールの捉え方は、ボールの右側(右利きの場合)を打球することが重要です。ボールに横回転を加える打法なので、そのためには横側を捉える必要があります。ボールの横側を捉えることによって、軌道を曲げるだけではなく回転の影響を受けづらくなるのも特徴です。
ボールの下側を捉えて振り抜くことで、下回転を加えたチキータを打つことができます。下側を捉えるので、主に下回転系のショートサーブやストップに対して有効な打ち方です。ボールを捉える位置によって回転や軌道は変化するので、さまざまな打ち方を試してみましょう。
チキータのコツ
チキータを打つときのコツは、ボールの落下地点を予測して動くことと、手首ばかりを意識しないことです。この2つのコツを意識するだけでも、成功率は大幅に変化していきます。
ボールの落下地点を予測する
1つめのコツは、ボールの落下地点を予測して動き出すことです。チキータを成功させるためには、ボールに体を寄せることが重要であり、素早く落下地点に足を運ぶ必要があります。
ボールが自分のコートにきてから動き出すようでは遅れてしまうので、相手がボールを打った瞬間に落下地点を予測して動くことを意識して、トレーニングを積んでいきましょう。
フォア側もチキータで対応しようとする場合は、台の中心付近にポジションをとるようにしましょう。バック側に寄ったポジションでは、ボールの落下地点を予測できても瞬時にフォア側まで移動することは困難です。チキータの使い方に応じて、ポジションを考えることも大切になってきます。
手首だけで打とうとしない
2つめのコツは、
手首だけで打たないことです。チキータは手首を曲げてバックスイングをとるため、手首の使い方に意識がいきやすい技術だといえます。手首を使うことは必要ですが、手首だけでボールに回転を加えたり飛ばそうと考えないようにしましょう。
手首だけに意識がいってしまうと、無駄な力が入ってしまい、ミスショットが増える原因にもなりかねません。準備段階で手首を曲げた後は、スイングの中で手首が自然にしなる感覚で打つようにしてみましょう。
チキータの練習方法
チキータの練習方法は、主に多球練習とシステム練習の2種類があります。どちらも習得するためには必要な練習で、これからチキータを覚えたい人は普段の練習に取り入れてみましょう。
多球練習
緒方遼太郎|チキータ(多球練習)|Ryotaro Ogata Special Technique #7 by VICTAS JOURNAL VIDEO
多球練習を取り入れることによって、
ミスを恐れずにチキータのスイングや動き方を覚えることができます。多球練習でチキータを練習する場合は、バック側の下回転ショートサーブを打つことから始めてみましょう。球出しをしてもらう練習パートナーには、バック側にコースを限定してサーブを打ってもらいます。
まずは下回転をチキータで持ち上げる感覚を養うことが目的で、20球1セットくらいのペースで打ち込んでいきましょう。
多球練習でチキータを磨く場合は、1球ずつニュートラルに戻ることを意識します。実践で使えるチキータを覚えるためには、下回転を持ち上げる感覚と同時に、足の運び方を覚えることがキーポイントになります。
システム練習
・邱コーチのシステム練習。浜本選手のチキータレシーブからの両ハンド【卓球】
チキータを取り入れたシステム練習は、バック対オールの練習方法がおすすめです(右利き同士の場合)。
①バック前かミドル前にショートサーブを出してもらう
②チキータを相手コートのバック側に打つ
③練習パートナーにはハーフボレーでクロスに返してもらう
④バック側にきたボールをバックドライブで攻撃
⑤ここからバック対オール(練習パートナーはバック反面)
バック側からチキータをクロスに打つことで、回転の性質上は自分のバック側に返ってきやすくなります。バック側に返ってきたボールをバックドライブで狙い打ちする練習ですが、試合でチキータを使うとこのパターンになりやすいので効果的です。
チキータの返し方
チキータの返し方は、回転に合わせて返す方法とチキータを狙い打ちする方法があります。チキータの回転に合わせるようにすれば、ボールが相手コートに入る確率は上がります。一方で狙い打つ方法はリスクがありますが、成功すれば得点につながりやすく、相手選手の精神面にダメージを与えることが可能です。
チキータの回転に合わせて返す
チキータを返球するためには、
チキータの回転を把握することが重要です。チキータは横回転が加わっているので、ボールが曲がることを考慮してラケットを出しましょう。
また、チキータには下回転が加わっている場合も考えられるので、相手が打球するときのラケット角度やボールの軌道を見ながら、自分のラケット角度を調節して打球することが大切です。
チキータを狙い打つ
相手がチキータを打つように誘導して、それを狙い打つことで相手にチキータを打ちづらくさせることが可能です。狙い打つ方法の一例は、相手にとってチキータが打ちやすい横回転系のショートサーブを出して誘導します。
チキータを打ってくるとわかっている状態なら、コンパクトなスイングを意識して両ハンドドライブやミート打ちで待つようにすればチキータは怖くありません。バウンド後に曲がることが予想されるので、コンパクトなスイングで打球することがポイントです。
チキータを狙い打つためには、普段の練習でチキータの軌道や回転に慣れておくことが必須条件です。方法は多球と1球練習のどちらでもかまいませんが、練習パートナーにチキータを打ってもらって、狙い打つタイミングやスイングの力加減を体に染み込ませていきましょう。
チキータしやすいラバー
チキータしやすいラバーを探すときは、回転量に注目してみましょう。チキータを打つときは回転のかけやすさが重要で、安定性に大きく影響してきます。用具によって打ちやすさが変化してくるので、用具選びを大切にしていかなければなりません。
チキータしやすい裏ソフトラバー
ラバー名 |
テナジー05 |
メーカー |
バタフライ |
種類 |
スピン系テンションラバー |
チキータしやすい裏ソフトラバーは、バタフライから発売されているテナジー05です。テナジー05はシートの引っ掛かりがよく、回転を生み出しやすいラバーになります。チキータは横回転を加えて打つことが重要で、シートで回転をかけやすいテナジー05が適しています。
・バタフライが誇る大ヒットラバー
・高品質のシートが強力な回転を生み出す
チキータしやすい表ソフトラバー
ラバー名 |
インパーシャルXS |
メーカー |
バタフライ |
種類 |
ハイテンション表ソフトラバー |
チキータがしやすい表ソフトラバーは、バタフライから発売されている
インパーシャルXSです。インパーシャルXSは回転を生み出しやすい表ソフトラバーで、チキータが難しい表ソフトの中ではやりやすい部類です。
表ソフトラバーでチキータを使う選手は少ないですが、表ソフトチキータを使いこなすことができれば重要な武器になってくれます。
・バタフライのスピン系ハイテンション表ソフト
・ツブの形は回転がかかりやすい台形型
チキータを使う有名選手
チキータを試合で使用することは、現代卓球において定番となっています。チキータを使う数多くの卓球選手の中には、チキータを軸にして試合を組み立てる選手も多く、世界的にチキータの名手として知られている選手が存在します。
チキータが得意な日本選手
選手名 |
森園政崇 |
生年月日 |
1995年4月5日 |
所属 |
BOBSON |
戦型 |
左シェーク裏・裏ドライブ主戦型 |
チキータが得意な日本選手といえば、世界選手権デュッセルドルフ大会で男子ダブルス準優勝に輝いた
森園政崇選手です。森園選手のチキータは威力と安定性を高いレベルで両立しており、世界でもトップクラスのチキータの使い手だといえます。
また、森園選手はダブルスで素晴らしい成績を積み上げ続けているのも特徴で、ダブルスにおいて得意なチキータレシーブが強力な武器になっています。
チキータが得意な海外選手
選手名 |
王皓 |
生年月日 |
1983年12月1日 |
所属 |
– |
戦型 |
右中ペン裏・裏ドライブ主戦型 |
チキータが得意な海外の卓球選手といえば、中国の
王皓(ワンハオ)選手です。王皓選手は2014年に選手としては現役を退いていますが、チキータを頻繁に使う中国式ペンの選手として卓球界に衝撃を与えました。
現代卓球を語るうえでチキータは必要不可欠な技術になっていますが、その礎を築いたのは中国の王皓選手だといっても過言ではありません。
逆チキータとは?
逆チキータとは、ショートサーブやストップに対してチキータとは逆のスイングをして打球する技術です。チキータと同様に近年大きな注目を浴びている台上技術ですが、チキータと比べて試合で使用する選手は少ないといえます。
逆チキータの意味
逆チキータという名前は、文字通りチキータとは真逆に見えるスイングからきています。チキータとは逆方向にスイングする技術なので、回転の方向も逆になります。
逆チキータの打ち方
逆チキータの打ち方は手順を解説します(右利きの場合)。
①ボールの近くまで体を寄せるために右足を台の中に入れる
②ヒジを高く上げて、手首を内側に曲げて準備
③ボールの右側を捉えるようにスイングを始動
④右斜め上方向にラケットを振り上げる
逆チキータのメリット
逆チキータのメリットは、ボールの横を捉えることで回転を影響を受けづらいことです。逆チキータは左側(右利きの場合)に曲がっていく打法ですが、相手サーブの回転が読めない場合でもボールを曲げながら安定してコートにおさめやすい技術になります。
逆チキータはチキータと併用して使うことで、より強力な武器になってくれます。台上技術の種類を増やすことで、相手に的を絞らせずに試合を進めることが可能です。
逆チキータを使う有名選手
選手名 |
加藤美優 |
生年月日 |
1999年4月14日 |
所属 |
日本ペイントマレッツ |
戦型 |
右シェーク裏・裏ドライブ主戦型 |
逆チキータを使う有名選手といえば、逆チキータを取り入れたプレーで活躍する加藤美優選手です。加藤美優選手は、2019年の世界選手権ブダペスト大会で女子シングルスベスト8の成績を収めており、逆チキータの使い手として世界に名をとどろかせています。
現代卓球で注目度の高い逆チキータは、加藤美優選手の名前をもじってミユータと呼ばれることもあります。加藤選手の名前がつけられている逆チキータですが、日本選手では平野美宇選手や伊藤美誠選手などが使用しており、トップレベルで戦う選手にとって重要な武器になっています。
チキータは現代卓球に欠かせない技術
トップのレベルで戦う卓球選手の中では、チキータは攻撃的な台上技術として欠かせない技になっています。卓球中級者層の試合でも、質の高いチキータができることによって先手をとれる確率が大幅に上がります。台上技術のバリエーションを増やしたい場合は、チキータと逆チキータの練習に取り組んでみましょう。