ストーミング戦術とは?サッカーの攻撃重視のプレスのメリットを解説
ストーミングは現代サッカーのトレンドにもなっている戦術です。ストーミングの意味とは、圧倒的なプレッシング、相手に呼吸も差せないほどの攻守の切り替え、一瞬でゴールを陥れるカウンターアタックです。アグレッシブなスタイルで相手を圧倒するストーミングが、今サッカー界で戦術的優位を築いています。
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公式ライター Activel_director
ストーミングとは?
相手の嫌がるスペースに何度もボールを入れていき、相手に襲い掛かるようにプレッシング、攻めている最中にボールを失えば瞬間的に切り替えてボールに群がりボールの奪還、そして奪った瞬間に圧倒的な速さ・迫力で一気に相手ゴールになだれ込みゴールを陥れます。
このような攻撃をすればチームバランスが崩れ、ゲームは落ち着きをなくしますが、そのような状況になったとしても構わず、拍車をかけるように同様の攻撃を繰り返します。
ストーミングによってそのように目まぐるしく状況が変わる様は「カオス」とも言われます。
ストーミングの特徴
時間的優位
とにかくスピードが重要視され、相手より速くプレーすることで時間的優位を獲得し、ゲームを支配します。
近年サッカーをリードしていた「ポジショナルプレー」がスペースを重視する考えなら、ストーミングは「時間」を重視する考え方です。
ストーミングの教祖とも言われるラングニック氏は「私のチームは1回のボール保持の時間は長くて12秒、5〜10秒でフィニッシュを終える。それ以上時間がかかれば相手を崩すのは難しくなる」と語っています。
ストーミングではボールを保持するためにゆっくりとボールを回すことを良しとはしません。
時間的優位を獲得し、幾度となく相手ゴールに迫っていくのがストーミングの特徴です。
ボールを失うことを怖がらない
攻撃時の優先順位はとにかく自分たちにとって優位なエリア、つまり相手陣地にボールを運ぶことです。有利なエリアにボールを入れることができるのならば、そのボールがたとえ相手に渡ったとしても構いません。
むしろ、危険なエリアで相手にボールを持たせてからプレッシングを掛け、奪ってカウンターを仕掛けるために「意図的にボールを捨てる(失う)」こともします。
ストーミングを採用するチームは、事前に「どこでボールを失うか?」ということもプランに入れています。
相手のディフェンダーの背後にロングボールを入れることで、相手のディフェンダーが後ろ向きになります。これは相手の嫌がるエリアとなります。
この場合、マイボールにならなくてもプレッシャーをかけてマイボールするプレッシングをかけることが大事です。さらにディフェンスがヘディングでクリアした場合にセカンドボールを拾うために選手を配置します。(A選手)
強烈なプレッシング
ストーミングはボールをポゼッションしてゲームをコントロールするのではなく、プレッシングで主導権を握ろうとします。そのプレッシングの迫力は従来の概念とは一線を画します。
ストーミングを思考するロジャーシュミット監督は、ストーミングのプレッシングのことを「相手がボールを持っている時は全員でボールを“狩り”に行く。猟犬を使って1匹のウサギを仕留めるように」と表現しています。ボールを奪うことを“狩り”と表現することでその激しさを強調しています。
相手がボールを持っていたとしても呼吸する暇も与えないほど強烈なプレスをかけることがストーミングの最大の武器なのです。
ストーミングのメリット
カウンターアタック
ショートカウンターは高い位置からのプレッシングで相手のボールを奪い、より短い時間・距離でゴールに迫るカウンターのことを指します。
ストーミングは積極的に相手陣地でプレッシング行い、ショートカウンターを決めることを狙いとしています。
意図したところにボールを誘導し、そこにボールが入った瞬間に猛烈なプレスを仕掛け、そのままカウンターを発動させます。
手数・時間をかけずにゴールに迫ることができる、効果的で驚異的な攻撃です。
相手にプレー時間を与えない
攻→守の局面では、即プレスをかけ、その後のプレーの判断する時間を奪いミスを誘発します。なんとかプレッシングを交わしてプレーしたとしてもその精度が落ちるため、その後の相手の攻撃の質を低下させることができるのです。
逆に守→攻の時は、ボールを奪った直後に相手ゴールに迫るため、相手は守備陣形を整える時間すら与えてもらえません。相手からすれば、気がついた時には決定的なピンチを作られてしまっているのです。
守備はチャンス
サッカーでは攻撃側が優位で守備側が不利という考え方が一般的ですが、ストーミング関してはそのような考え方は当てはまりません。
相手ボールを奪い、一気にゴールまで迫ることを武器とする戦術がゆえに、ストーミングを行うチームは守備時も大きなチャンスなのです。
ボールを保持していればもちろん攻撃することができるためチャンスですし、相手ボールもボールを奪い取って一気に攻め込むことができるためチャンスとなります。
ストーミングが乗り越えるべきハードル
圧倒的な走力
1試合通してアグレッシブにプレスをかけるには相当の走力が必要です。スピードが足りなかったり、体力が低下することによってプレスがかからない状況になれば、この戦術はたちまち破綻します。
ストーミングで世界に名を馳せているドイツのサッカークラブ、ライプチィヒは「足が速い」「23歳以下」という選考基準で選手を獲得しています。
それほどストーミングを行うためには走力は欠かすことのできない能力なのです。
動きながらのテクニック
その過程でミスをしてしまえば相手に守備陣形を整う時間を与えてします。相手の守備組織が整う前に一気に攻め切ろうとするストーミングにとってそれは許容しがたいミスなのです。
また、ゴールを奪うためにはどこのスペースを狙えばいいのかスプリントしながらも見極めなくてはならず、そのような状況を観るテクニックも必要となります。
戦術的理解度
ストーミングを実践するにはプレッシングがかからなければ機能させることはできません。
現代サッカーでは相手のプレッシャーを外そうと試合中にフォーメーションを変えることは当たり前になっています。
その変更に対応できず、どのようにプレスをかければわからないという選手が一人でもいれば、そこからボールが漏れてしまい、一気にピンチになってしまいます。
圧倒的な走力を保持しながらも高い戦術的理解度がある選手を揃える必要があるのです。
ストーミングを実践するチーム
リバプール
世界屈指の3トップ、サラー・フェルミーノ・マネを中心とした攻撃陣が凄まじいスプリント力とテクニックを駆使して相手が息つく暇のないほど連続してゴールに迫ります。
また、リバプールは守備も非常に特徴的です。サイドに追い込んでいくのがサッカーの守備のセオリーですが、リバプールは3トップがサイドへの逃げ道を封鎖するように追い込み、中央にボールが入った所を奪い取り、鋭いカウンターを決めます。
監督・選手・戦術、あらゆる面で現在世界のトップを走るクラブチームです。
ライプツィヒ
現代サッカーではサイドのスペースを有効に使いながら攻めるというのが主流である中、ライプツィヒはストーミングを実践しやすいように中央に人数を集めて群れとなって一気に相手陣地に流れ込みます。
ライプツィヒはそのスタイルを徹底すべく、フォーメーションは4−2−2−2という特殊なものを採用しています。
中央に集めらた2−2−2の6人を中心に猟犬のごとくボールホルダーに襲いかかる様子は圧巻で、「ザ・ストーミング」とも言えるプレーで国内リーグはもちろん欧州カップの舞台でも猛威を振るっている、今旬なチームです。
ストーミングがサッカー界を圧巻する!?
今後もしばらくはストーミングの流れは止まることなく、最先端の戦術としてサッカー界をリードしていくはずです。
しかし、サッカーは常に進化しており、ストーミングにも新たな変化が起こっています。
それは対極とも考えられていた「ポジショナルプレー」の導入です。
スピードでのゲームコントロールを狙いとするストーミングが、スペースでのゲームコントロールを導入し始めることでストーミングは新たなレベルに達しようとしています。
「ストーミング+ポジショナルプレー」、そのようなサッカーが今後のサッカー界を圧巻していくのかもしれません。
ポジショナルプレーとは?ピッチ上で優位をつくる戦術を解説
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