持久走とは70%程度の力で一定の距離や時間を走る運動です。中距離走やマラソンは持久走と似たルール・距離のスポーツですが、速さや他人と競うことを目的とする点で持久走とは大きく異なります。持久走を速く走るには、正しいフォームと苦しいときの対処法を知っておくことが大切です。
持久走とは?
持久走とは、自身の7割程度の力で一定の距離や時間を走りきる競技です。速く走ることや1位を取ることに大きな意味がある中長距離走と違い、持久走とは自分の目標を達成したり、体力や精神力を鍛えたりすることが目的となります。
文部科学省の学習指導要領では、長い距離を走ることすべてを持久走と扱うため、小中学校では持久走本来の目的を理解せず実施していることが多いです。
持久走の意味
持久走とは、
70%程度の力で一定の距離や時間を走りきることで、自身の全力でなく力をコントロールした状態で走りきることに大きな意味があります。70%の力で走る理由は、余力を残すことがフォームの安定や持久力の更なる向上に役立つ効果があるためです。
持久走の大会も順位付けをしますが、走ることに対する能力は個々で異なることから、中・長距離競技ほど順位に意味はありません。
持久走と長距離走の違い
持久走と長距離走の違いは、他人と競うか否かです。どちらも1,000m超の距離を走り続ける競技ですが、長距離が他人との順位や速さを競うことに対し、持久走は前回までの自分より向上することを目指します。小中学校の持久走大会は、本来の持久走の意味でなく、全力で速く走ることを目的とした長距離走同様の競技内容とする場合が多いです。
持久走の目的
持久走とは、5つの目的でするスポーツです。
・持久力の向上
・筋力の向上
・自身の体力や限界を知ること
・自身の精神力と向きあうこと
・自己の目標を達成すること
持久走の最大の目的は、自分のペースで体力や精神力を高めることにあります。目的に沿った持久走をするためには、苦しくても走りきる、5分以内にゴールすると自分なりの目標を立てることが必要で、他人でなく目標を意識して走ることで持久走の効果が期待できます。
持久走の歴史
持久走とは、マラソンから派生した歴史を持つ競技です。日本の学校教育に持久走が取り入れられた時期は昭和24年で、以来70年以上の長きにわたり小学校高学年以上を中心に体育の授業の歴史ある定番種目とされています。
持久走の起源
持久走とはマラソンから派生した競技で、いつ・どこで考案されたか明確な起源はわかっていません。紀元前から続くマラソンの歴史の中で、全力を出し切るよりも効果的で高い有酸素持久力や筋力を得るための派生スポーツとして持久走が開発され、長距離走や体力づくりの一環で活用されることになったと言われています。
持久走と教育の歴史
持久走と教育の歴史は昭和24年に始まります。持久走は、当初必要な運動と確立されておらず、戦後初の昭和22年小学校学習指導要領では遊戯の一部に組み込まれていました。昭和24年の改定案で、初めて体を作るために必要な競技と高学年の授業に持久走が取り入れられ、以来目的を変えながらも途絶えることなく70年以上学校教育に取り入れられています。
持久走のルール
持久走には中・長距離と同様のルールがあり、スタンディングスタートをすることやコースの外側から他走者を抜かすことが原則です。しかし持久走はマラソンと違い、厳密にルール違反を取られることが少なく、他走者と楽しく競技をするためのマナー程度に捉えることが一般的になります。
スタート時のルール
持久走のスタート時のルールは3つです。
・スタンディングスタートをする
・前方に準備した足はスタートラインにのせない
・位置についての合図からスタートの合図まで動かない
持久走のスタートでは、一般的に陸上の長距離種目に準じたルールを採用します。学校や気軽な市民行事で持久走を開催する場合、スタート時にルールの細かいチェックをすることは少なく、同じタイミングで出ることのみを重視する傾向がみられます。
抜かすときのルール
持久走には、前の走者を抜かすときにコースの外側から抜かすルールがあります。外側から抜かすことは、短距離走やリレーも同様となる陸上競技共通のルールで、他走者の行動を妨げたり自らがコースインの失格をしたりしないために定められています。持久走で厳密に反則を取られることは少ないですが、マナーの1つと捉え、念頭に入れておくことがベストです。
持久走の距離
持久走の距離は、小学生で1,000m以下、中学生以上で1,000~1,500mが一般的です。ただし、自分でペースを整えたり体調不良に気づいたりすることの難しい小学生は、距離でなく時間を設定し走ることが増えています。部活で体づくりや運動能力が高まっている中学生や高校生の場合には、2,000m以上の距離を設定されることも多いです。
小学生
小学生の持久走とは、1・2年生で600m、3・4年生で800m、5・6年生で1000mの距離が最適とされています。一方、小学生の持久走は児童自身が体の不調に気づきにくく安全面の担保が難しいことから、1998年に小学生長距離・持久走検討プロジェクトで日本陸上競技連盟が提案した5分間走を持久走の授業に取り入れる学校が増えています。
中学生
中学生の持久走とは、男子1500m・女子1000mの距離が一般的です。体の成長が進み男女差の出てくる中学生は、小学生時代と異なり、年齢でなく性別で距離が決定されます。中学生の持久走の距離は、公式の陸上競技種目では中距離にあたります。
高校生
高校生の持久走とは、中学生と同一となる男子1,500m・女子1,000mの距離が推奨されています。ただし、高校生は身体能力が著しく、部活動で更なる鍛錬を積むことも多いことから、学校により長距離種目と同等の2,000m~10,000mを走らせる場合もあります。
持久走の平均記録
持久走の平均記録は、
文部科学省が毎春実施する新体力テストの結果で知ることができます。小学生は体力や能力を考慮して持久走とは異なる競技方法で持久力を測ることが一般的です。
体つきが大人へ変わり始める小学校の高学年から持久力は大きく向上し、中学生では年に10~30秒タイムを伸ばし続ける傾向がみられます。ただし授業や部活動に自由度が高まる高校生では、持久力の個人差が大きくなり平均記録も鈍化します。
小学生
学年 |
5分間走の平均距離 |
男子 |
女子 |
1年生 |
841m |
802m |
2年生 |
912m |
873m |
3年生 |
958m |
912m |
4年生 |
1003m |
952m |
5年生 |
1038m |
1001m |
6年生 |
1083m |
1037m |
小学生は、体力や成長過程であることを考慮し、持久走とは異なる5分間走で持久力を測っています。2014年の日本スポーツ協会の運動適性テストでは、低学年から中学年に持久力が大きく伸びる傾向がみられます。6年生の記録は、中学1年生の持久走のタイムとほぼ同等です。
中学生
学年 |
男子1,500m |
女子1,000m |
1年生 |
6分53秒 |
4分48秒
|
2年生 |
6分17秒 |
4分35秒 |
3年生 |
6分05秒 |
4分40秒 |
2019年度の体力・運動能力調査によると、中学生は男子・女子ともに小学校時代と比べて、持久走の記録が大きく向上する傾向があります。持久走の記録が上がる原因は、体の成長はもちろん、中学生の多くが部活動に属して豊富な活動量をこなしていることにあります。
高校生
学年 |
男子1,500m |
女子1,000m |
1年生 |
6分16秒 |
5分00秒 |
2年生 |
6分00秒 |
4分51秒 |
3年生 |
5分58秒 |
4分53秒 |
2019年度の体力・運動能力調査によると、高校生では男女ともに中学時代ほど大きな持久力の向上はみられません。高校生の持久力の鈍化は、大学受験に大きく時間を取られる生徒が多いことや、部活動を含め積極的に運動をする生徒と授業以外で運動をしない生徒の差が大きくひらくことに原因があります。
持久走を速く走るために必要なこと
持久走とは、3つのポイントを抑えることで速く走ることが可能となります。
・正しいフォームを身につける
・効果的な練習回数・時間で体に筋肉をつける
・走りづらくなったときの対処法を知っておく
長距離走の練習で無理をすることは、慢性的な不調やけがの原因となります。持久走とは、正しい方法で体と向き合いながら焦らず練習を重ねることが大切なスポーツです。
フォーム
|
正しい姿勢 |
頭・顔 |
まっすぐ前を向く |
腕・手 |
ひじを後ろに引く |
胴 |
体幹を意識しまっすぐ |
足 |
足の裏全体で着地 |
持久走を速く走るためには、体力の消耗を最小限にでき怪我をしないフォームを身につける必要があります。体力の消耗を抑えるには、上半身を左右や前後に揺らすことなく軸をまっすぐにして走ることが大切です。けがの防止にはひざ下のフォームが重要で、足の裏全体で地面を捉えると、つま先やかかとから着地するフォームで走るときよりも疲労骨折を防いだり余計な負担を軽減したりする効果があります。
頻度・時間
持久走の練習は、
週3日の頻度で同じ時間帯にすると効果的です。
フォームや筋力が整っていない状態で毎日練習をすると、怪我や体の不調の原因となります。正しいフォームで練習をしたのち、2日程度休むことで鍛えた筋肉を回復させ強固にすることができおすすめです。
持久走とは自分の生活時間にあわせて練習できる自由度の高い競技です。ただし、毎回同じ時間帯に練習することで、筋肉のリズムが整い、さらに高い効果が期待できます。
走り方のコツ
持久走を速く走るコツは、
辛くなる理由と対処法をあらかじめ知っておくことにあります。
走り始めで苦しくなる現象は、体中に運動に対応できる量の酸素や血液がいきわたっていないことが原因です。苦しい場合も一定のペースを保ち続けることで体が運動モードとなり速く走れます。
持久走の後半で足が出なくなる現象は、筋肉が緊張し凝り固まった状態になることが原因です。走りながら体をほぐし力を抜くことで解消できます。
持久走のコツ7選!長距離走を速く走る方法を伝授!
持久走で速く走るコツや疲れない走り方のコツを意識すると効率的に走ることができ、タイムを縮めることができます。持久走…
持久走をもっと楽しもう!
持久走とは、自分の身体や体力と向きあい持久力を高めることを目的とするスポーツです。日本の学校では順位や速さを重視したマラソンと持久走を混同している場合が多く、8割程度の児童・生徒が持久走大会を嫌いと回答した研究結果も報告されています。
本来の持久走とは、子供時代から大人まで気軽に自分のペースで実践できる優れた競技です。持久走についての正しい知識を持ち、楽しみながら持久力を高めましょう。