ゾーンディフェンスとは、エリアを守る戦略です。ゾーンディフェンスのやり方は、基本の構え方を習得し、フォーメーションにあった動き方をすることです。ゾーンディフェンスの練習をするときには、チーム全体で練習します。ゾーンディフェンスは15歳以下では禁止されています。
ゾーンディフェンスとは?
ゾーンディフェンスとは?
ゾーンディフェンス(Zone Defense)とは、バスケットボールのディフェンスの守り方の1つです。ゾーンディフェンスのフォーメーションは複数あります。
ゾーンディフェンスの意味
ゾーンディフェンスの言葉としての意味合いは、各プレイヤーがゾーン(エリア)を担当して守ることです。ゾーンは、zoneと書き区域を、ディフェンスはdefenseと書いて守りを意味します。
マンツーマンディフェンスとの違い
ゾーンディフェンス |
担当するエリアを守る |
マンツーマンディフェンス |
マッチアップする特定の1人を守る |
バスケットボールのゾーンディフェンスとマンツーマンディフェンスとの違いは、特定の相手に絞ってマークしないことです。マンツーマンディフェンスでは、対応する相手を決めているので相手から大きく離れません。ゾーンディフェンスでは、エリアを守りますので、自分が担当するエリアに入って来たオフェンスプレイヤーは、ミスマッチがあっても対応しなくてはなりません。
ゾーンディフェンスのメリット・デメリット
ゾーンディフェンスとは? わかりやすく バスケットボール理論
バスケのゾーンディフェンスには、メリットとデメリットがあります。マンツーマンディフェンスからゾーンディフェンスに切り替えることで、失点が大きく減らせるときがあり、逆のパターンもあります。ゾーンディフェンスを効果的に使うには、メリットとデメリットをきちんと把握して取り組むことが重要です。
ゾーンディフェンスのメリット
ゾーンディフェンスのメリットは次のとおりです。
・ゲームのリズムに変化をもたらす
・味方同士で助けあって守れる
・オフェンス側の動きに惑わされにくい
・ディフェンスの穴ができにくい
ゾーンディフェンスは、担当するエリアを守る戦略なので、ドライブで内側に入り込まれた場合には、内側のエリアを守るプレイヤーがカバーします。オフェンス側が仕掛けてくるスクリーンプレーは、効力を発揮しづらくなります。
ゾーンディフェンスのデメリット
ゾーンディフェンスのデメリットは次の3つです。
・ミスマッチがあると集中して攻められる
・ディフェンスリバウンドが獲りにくい
・素早いパス回しに弱い
オフェンス側は、低身長のディフェンダーの近くに高身長のオフェンスプレイヤーを配置して攻撃し、ミスマッチが作れます。リバウンド争いでは、スクリーンアウトする相手が明確に決まっていないので、ディフェンスリバウンドの確保に苦労します。
ゾーンディフェンスのやり方
ゾーンディフェンスのやり方は、チームで決めたフォーメーションどおりにポジショニングし、構えたところから始まります。相手がコントロールするボールが自陣に入る前に構えるのが基本です。相手の攻撃に対しては、自分の位置とボールの位置と敵の動きを把握して、役割を判断して動きます。
各プレイヤーの構え方
ゾーンディフェンスをするときの構え方は、各プレイヤーが自身を大きく見せ、味方同士の間にパスを通しづらくするため、両腕の肘を伸ばし、手を大きく広げることが基本です。
シュートができる位置にいるボール保持者に対応するときは、片手を上げシュートを防ぎます。ボール保持者にディレクションするときは、どちらに抜かれたほうが味方と連携して堅く守れるかを重視しましょう。
各プレイヤーの動き方
ゾーンディフェンスの各プレイヤーの動き方は、ボール保持者が近くにいるときと、いないときで役割が異なります。
ボールの位置 |
動き方① |
動き方② |
ボール保持者が近くにいる |
ボール保持者に近づきシュートチェック |
簡単に抜かれない |
ボール保持者が近くにいない |
ボール保持者に少し寄る |
常に周りを見回して攻撃側の選手の位置を把握する |
ゾーンディフェンスでは、各プレイヤーがボール保持者に自身を見せるポジションに動くと、パスコースをさえぎり、味方が抜かれてもカバーリングできる脅威を与えます。また、常に周囲を見回して、味方と相手の位置を把握しなくてはなりません。
各プレイヤーの注意点
ゾーンディフェンス中の注意点は、連携をスムーズにする行動を怠らないことです。マークマンがはっきりしないゾーンディフェンスでは、ボール保持者が近くにいないときの動き方の判断が難しくなります。
連携をスムーズにする行動で最も重要なことは、声を出してコミュニケーションを図ることです。声で伝える内容は、主に次の2つです。
・自身の位置と動き方
・相手オフェンスの動き
ゾーンディフェンスの種類
バスケットボールでは、ゾーンディフェンスの種類が複数あります。
・2-3ゾーン
・1-3-1ゾーン
・ボックスワン
・オールコートゾーンプレス
ゾーンディフェンスはハーフコートでおこなうことが基本ですが、オールコートゾーンプレスも、ゾーンディフェンスの種類に含まれます。
2-3ゾーン
2-3ゾーンは、バスケットボールのゾーンディフェンスでもっともポピュラーなものです。スリーポイントラインの内側で、センターライン側に2人、エンドライン側に3人がエンドラインに平行に並んでポジショニングします。センターライン側をガード陣が、エンドライン側をフォワードとセンターが担い、インサイドの守りを重視したフォーメーションです。
1-3-1ゾーン
1-3-1ゾーンディフェンスは、フリースローラインの延長線上よりセンターライン側からの外角シュートや、ハイポストからのオフェンスに強い守り方です。1-3-1ゾーンは、両コーナーが空くので、コーナーにボールが回った時の連携が重要です。
エンドライン側のプレイヤーがケアする範囲が大きいので、残りのプレイヤーの的確なポジショニングが肝となります。
ボックスワン
ボックスワン
ボックスワンは、特定のオフェンス選手1人に対して、ディフェンス1人がマンツーマンで守り、残りの4人で箱形のゾーンディフェンスを形成する守り方です。ボックスワンは、ボールを持たせたくないスコアラーが相手に1人いる場合に採用します。
4人でゾーンを形成しているので、コーナーやハイポストの対処をどのようにするかが課題です。相手チームのセカンドスコアラーがどのようなタイプなのかによって変化が必要です。
オールコートゾーンプレス
オールコートゾーンプレス
オールコートゾーンプレスは、フルコートで相手にプレッシャーをかけて追い込む、活動量を必要が必要な守り方です。手順は次のとおりです。
①1がスローインをする選手にプレッシャーをかける
②2がスローインを受けた相手プレイヤーに対してプレッシャーをかける
③1はパスのボールを追うように動く
④1と2でスローインを受けたプレイヤー挟みこむ
⑤3や4が苦し紛れで出されたパスのスティールを狙う
ゾーンディフェンスの練習方法
ハーフ5on5でゾーンディフェンスの練習 2016.7.24【バスケ】【初心者】
バスケのゾーンディフェンスの練習は、1人ではできません。ゾーンディフェンスの基本はチームで守ることですので、チーム全体で練習します。オフェンス役も必要ですから、ゾーンディフェンスの練習は10人以上必要です。
なお、オフェンス側は、ゾーンディフェンスの練習を通じて、ゾーンディフェンスの攻め方を研究できます。
フォーメーションを決める
ゾーンディフェンスの1つめの練習方法は、フォーメーションを決めることです。バスケットボールのゾーンディフェンスには、いくつかのフォーメーションがあります。どのフォーメーションがチームにフィットするのかを考えて選ぶところからが練習となります。
ボールの動きにあわせて動く練習
ゾーンディフェンスの基本練習の質を上げるコツ【公立高校バスケ指導】
ゾーンディフェンスの2つめの練習方法は、オフェンスのパス回しに対応して動く練習です。ディフェンス側は、3ポイントラインの内側でゾーンを組み、オフェンス側はトップオブキー、両45度、両コーナーの3ポイントラインの外側にポジショニングして、パスを回してボールを動かします。ディフェンス側の役割は、パスが回るごとに次の表のように変わります。
ボール保持者に対して |
対応人数 |
やること |
注意点 |
最も近い |
1人 |
シュートチェック |
抜かれる場合の方向 |
近い |
2人 |
ボール保持者に少し寄る |
相手のパスコースを狭める |
遠い |
2人 |
カバーとパスカットができる位置に動く |
複数のオフェンス側の選手をケアする |
ディフェンスが3ポイントラインの外側のパス回しに対する動きが素早くできるようになったら、オフェンス側はドライブや、ハイポストのポジショニングなどを織り交ぜます。ディフェンス側は、オフェンス側の複合的な動きにも対処できるように練習を重ねるとゾーンディフェンスが強くなります。
トップオブキー
相手ゴールとコートの真ん中を結ぶ線上で、3ポイントラインの少し外側辺りです。
45度の位置
エンドラインを基準として、相手ゴールから左右45度の角度の線上を意味し、特に45度で3ポイントライン付近です。
コーナーの位置
左右のエンドラインとサイドラインが交わる場所辺りです。
NBAのゾーンディフェンス
バスケットボールの最高峰リーグであるNBAのゾーンディフェンスは、使用される頻度が比較的少ないです。2000年-2001年シーズン以前は、ゾーンディフェンスが禁止されていたため、NBA独自ルールのイリーガルディフェンスがありました。ゾーンディフェンスが解禁された後は、ディフェンス3秒のNBAの独自ルールができています。
イリーガルディフェンス
ゾーンディフェンスを禁止するためにNBA独自で採用されたルールです。位置を問わず、ディフェンスがマッチアップするオフェンスから腕1本分の距離である、腕1本分以上離れた状態が3秒続くと、レフリーに反則をコールされます。2度目以降はテクニカルファールと同じ扱いとなり、相手チームにフリースローが与えられます。
ディフェンス3秒ルール
ゾーンディフェンスが解禁された後に、NBA独自で採用されたルールです。ディフェンダーが、オフェンスに直接かかわらない状況でペイントエリア内に3秒以上留まると、レフリーに反則をコールされ、テクニカルファールに準じた扱いとなり、相手チームにフリースローが与えられます。
NBAチームがゾーンディフェンスをする意図
Miami Heat 2-3 Zone Basketball Defense
NBAチームがゾーンディフェンスをする意図は、
ディフェンス戦略を変えることにより、相手オフェンスのリズムを変えることです。
NBAでは、プレイヤーの技術が高いため、チームでゾーンディフェンスの弱点を突く攻め方を実行できれば、容易に得点をとる事ができます。しかし、チームのゾーンディフェンス対策が入念にされていないと、ゾーンディフェンスに戸惑い、ゾーンディフェンスが成功することもあります。
ゾーンディフェンスの禁止とは?
ゾーンディフェンスの禁止とは、
日本国内で15歳以下のカテゴリーでゾーンディフェンスが禁止されていることを指し、裏を返すと
マンツーマンの推進です。具体的には、中学とミニバスでゾーンディフェンスが禁止されています。
15歳以下のゾーンディフェンス禁止は2016年度から施行され、次の目的があります。
・プレイヤーズファーストを尊重
・目先の勝利に捉われない長期的視点に立った指導の推進
中学のゾーンディフェンス禁止
中学のゾーンディフェンス禁止は、2016年度から始まりました。ゾーンディフェンス禁止は、マンツーマン推進を目的としたもので、次の狙いがあります。
・発育、発達段階に応じた適切な指導で選手をより高いレベルへ導く
・よりバスケットボールを楽しんで打ち込める環境を作る
・日本全体の競技力を向上させる
他のバスケ強豪国が、16歳以下のカテゴリーでゾーンディフェンスを禁止している背景もあります。
ミニバスのゾーンディフェンス禁止
ミニバスのゾーンディフェンス禁止は、中学と同様に2016年度から始まりました。ミニバスは12歳以下のカテゴリーです。国際バスケットボール連盟(FIBA)ではもともと、ミニバスカテゴリーでゾーンディフェンスを禁止していたので、
国際基準に準じた見方もできます。
ミニバスでは、1on1のディフェンスとオフボールディフェンスのやり方を学びます。
ゾーンディフェンスは鍛錬によって強くなる
バスケットボールのゾーンディフェンスは、チーム一丸となった鍛錬により強くなります。選手1人1人がマッチアップ相手より守備力が勝っていれば、マンツーマンディフェンスで対応ができますが、選手間やチーム間の相性もあり、簡単にはいきません。ゾーンディフェンスは、チーム全体で狙いとやり方を共有できていれば、効果的な守り方になるはずです。