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サッカー戦術論!名将監督のシステムやフォーメーション理論解説

サッカー戦術論!名将監督のシステムやフォーメーション理論解説

サッカーにおける戦術とは試合に勝つための理論だと言い換えることができるでしょう。名将と呼ばれる二人の監督が用いる究極の戦術からサッカーの本質に迫ってみたいと思います。戦術理論がわかればサッカーのプレイの幅も広がりますし、観戦の楽しみも増えるでしょう。

2021.12.16 サッカー

サッカーの戦術とは?

サッカーが世界的な人気スポーツとして多くの国や地域で楽しまれている根本には戦術的な奥深さがあると思います。

長いサッカーの歴史の中で様々な戦術が生まれ破られ、それを繰り返すことでサッカーというスポーツは洗練されながらも奥深い観戦の幅を得てきたのです。

現代サッカーを代表する2つの戦術理論と、それを高いレベルまで昇華させた2人の名将監督を紹介しつつ、サッカーを戦術的な面から楽しめるようになる知識をフォーメーションやシステムに触れながら解説していきたいと思います。

サッカーの戦術論の考え方とは?

オフェンスとディフェンスの戦術理論はバイタルエリアを巡るもの

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詳しい解説の前にサッカーの戦術の基本的な部分を説明しておきます。

サッカーではオフェンス、ディフェンスそれぞれに戦術理論がありますが、重要なポイントはすべて同じで、「バイタルエリアをどうするか?」というところが戦術理論のスタート地点なのです。

サッカーではバイタルエリアに効果的に侵入することで決定的なチャンスを生み出せて、これが得点に繋がりますし、逆にバイタルエリアをしっかりと守ることができれば失点のリスクは限りなく小さくなります。

ですからサッカーの戦術理論は基本的にオフェンス戦術にしろディフェンス戦術にしろ、すべてバイタルエリアでどうするのかが目的となっているのですね。

このバイタルエリアの攻略or防衛という目的のためにいくつものシステムが考案され、そのシステムを機能させるためのフォーメーションが生み出されていったのです。

サッカーの戦術論とは?

ポゼッションサッカーとカウンターサッカー

Getty Images (28042)

サッカーではバイタルエリアを巡って戦術が生み出されてきたわけですが、大きく分けると2つの基本的な戦術理論に絞り込まれます。

様々なフォーメーションやシステムが存在するサッカーですが、バイタルエリアをどう攻略するのかという観点で考えれば、たった2つの戦術理論になるわけで、フォーメーションやシステムごとの違いというのはバイタルエリアへのアプローチ方法に関する部分なのです。

サッカーの戦術理論と言うと複雑で難しそうなイメージを持ってしまいがちですが、このように2つの基本戦術理論でシンプルに考えるようにすると、サッカー観戦の楽しみ方がわかってくると思います。

このページの解説もこの大別した2つの戦術理論を基に説明していきます。

サッカーの戦術①

「貧者の戦術理論」カウンター戦術

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サッカーにおけるカウンター戦術とは、相手のディフェンスブロックが堅固に構築される前に少ない人数、少ない手数でバイタルエリアに侵入しゴールに迫ることを主眼とした戦術理論です。

この戦術の狙いを完遂するためには相手が人数をかけて攻めてきてくれなければ意味がありませんから、基本的に自らボールをキープすることを半ば放棄し、あえて相手に主導権を委ねる試合運びを行います。

従ってディフェンスはリトリート主体となり自陣で待ち構えることが容易なシステムやフォーメーションを選択することになります。

このような狙いで選手が動くシステムを特にリアクションサッカーと呼びます。
受け身のサッカーという意味ですが、カウンター戦術は受け身で待ちつつ後の先をとるサッカーと言えるでしょう。

何故「貧者の戦術理論」なのか

サッカーにおけるカウンター戦術はチーム内での各選手の役割が明確で、ざっくり言うと現代サッカーのトレンドとは真逆の攻守分業型戦術理論なのです。

そのため各ポジションに求められる選手像がはっきりしており、フォーメンションの各ポジションに複雑なタスクが存在しないことから、比較的お金をかけずに完成度を高めることができるので、世界各国の中堅から下位のお金が無く弱いサッカークラブが好んで導入しています。

資金面から考えるとカウンター戦術以外の選択肢が無いというほうが現実に則しているかもしれません。お金のないクラブチームが活用するシステムを揶揄する意味合いで貧者の戦術理論と呼ばれることがあります。

攻守が別れていることで負けにくいカウンター戦術

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カウンター戦術はシステム上もっとも強固な1−1−4−4ないしは1−5−4の守備システムでディフェンスブロックを形成し、攻撃時は前に残した1トップに残りは2人ほどしか絡まず、できる限り素早く攻撃を行います。

完全に攻守が別れていることでカウンターが失敗に終わっても攻撃参加しなかった選手が後ろですぐさま守備ブロックを再構築できるので、失点のリスクが最小限となります。

そのため失点が少なくなり、勝つことはできなくとも負けない、ドローに持ち込みやすい戦術理論となっています。
サッカーではドローでも勝ち点が貰えますから、弱い下位のチームがリーグ残留のためにコツコツ勝ち点を積み上げるのに向いています。

肝となる守備理論が選手に教え込みやすい

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サッカーのカウンター戦術は負けない理論であるため、まず守備組織を徹底的に強固なものとしなければなりません。

この守備戦術はオフェンス戦術よりも理論体系がシンプルで基本的なことは練習で理解しやすいこともあり、弱いチームがカウンター戦術を選択する大きなメリットとなっています。

相手が攻めて来たらこうする、次に攻めてきたらどうする、といった具合に、サッカーで頻繁に見られる各シチュエーションによってどのようなフォーメーションをとれば良いかが理論として確立されているわけです。

従って戦術理論が結果にすぐに結びつき、チームがまとまるのが早くなります。

チームが戦術理論の元でシステム理解を共有し、しっかりとまとまることができれば、選手個々の能力の総和以上の強さを発揮できるのはサッカーでは基本的な考え方ですから、シンプルにそしてスピーディにチーム作りを完了できるカウンター戦術は扱いやすい戦術理論だと言えるでしょう。

サッカーの戦術②

名将モウリーニョ監督の戦術構築

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サッカーでは名将と呼ばれる監督が多数存在しますが、特に堅守速攻を追求した戦術理論でいくつものチームに栄光をもたらしてきたのが名将モウリーニョ監督です。

ときに美しさや芸術的なものが求められるサッカーというスポーツにおいて、非常に堅実で結果にこだわるサッカーをするモウリーニョ監督の理論は、一切のロマン要素を削ぎ落とした現実的な理論となっており、システムやフォーメーションも洗練されたものを好みます。

お金をかけた「貧者の戦術理論」で手堅いサッカーを追求する

貧者の戦術理論のカウンター戦術を、強豪と言われるサッカークラブの一流の選手を用いて行うところにモウリーニョ監督の戦術理論の真骨頂があると思います。

結果にこだわり結果がすべてというメンタリティがモウリーニョ監督にはあるようで、それがカウンター戦術という攻撃のリスクを最小限にする理論の選択に至ったのでしょう。

早期にチームをまとめることが可能なカウンター戦術は、常に結果を出し続けることを求められるモウリーニョ監督への周囲の期待にも応えやすいものだといえます

込み入った複雑な戦術を時間をかけて熟成させるために、その間チームの成績が悪くなってしまうといったような博打的要素を嫌う考え方があるのではないかと思います。

サイドアタッカーの質にこだわる

一般的なサッカーのカウンター戦術では、カウンター時に前のこりしていた1トップへとボールをつなげるときに、ロングボールを主体とします。

パスを何本も繋げたりサイドでのドリブル突破は失敗したときのリスクが大きいですし、カウンター戦術を選択せざるを得ない下位の弱いクラブではパスやドリブルを高いレベルで行える選手が存在しないことも多く、また補強で獲得することも難しいからです。

そのためロングパスでリスクを抑えながらカウンターをしていくわけですが、ロングボールは滞空時間の分だけ相手に対応の時間を与えることになりますから成功率が低くなりがちです。
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カウンター戦術の特徴ではありますが、勝つためのカウンター戦術であるならばここを解決したいところです。
モウリーニョ監督が率いる強豪サッカークラブは、カウンター戦術の泣き所である問題を、高レベルのサイドアタッカーを起点とすることでクリアしています。

能力の高い選手たちであえてカウンター戦術を志向している強みがここで出てくるのです。

ロングボールだけではなく、ある程度短いパスでの繋ぎや、サイドでのドリブルによる前進や突破を組み合わせ、全体的なカウンターアタックの成功率を高めているわけです。

自身と同じようなプロフェッショナリズムを選手にも求める

このように合理的なカウンター戦術理論で勝利を生み出すモウリーニョ監督のサッカーですが、これを可能にしているのは選手たちの高いプロフェッショナリズムです。

カウンター戦術はボールの支配を相手に委ねてひたすら堪えながら少ないチャンスでカウンターを行う戦術理論ですから、各ポジションの献身的なハードワークが欠かせません。

前残りする1トップ以外の選手たちは常に最後列まで戻って守備をしないといけず、1人でも守備をサボってしまうと機能しなくなるからです。

モウリーニョ監督は、自身が徹底した合理性にこだわり最期までそれを遂行するように、選手たちにも戦術を徹底するためのハードワークを試合終了まで続けるだけのプロフェッショナリズムを求めます。

格下の相手にはポゼッションサッカーに切り替えることができる

サッカーにおけるカウンター戦術は相手にボール支配、つまりポゼッションさせて行う戦術理論ですから、逆に相手がポゼッションを捨てて同じカウンター戦術で対抗されると決め手に欠けるという弱点があります。

特にモウリーニョ監督が率いるような強豪と対戦した格下の下位チームは、ポゼッションを維持するだけの技術がチームとして欠けていますから必然的にカウンター戦術で試合に臨んでくることになります。

このような場合、質の高い一流選手が揃っているわけですから、モウリーニョ監督はポゼッションサッカーに切り替えて攻めるという柔軟性を発揮します。

自分たちと相手の戦力差をしっかりとスカウティングして試合の準備をするモウリーニョ監督ならではの采配ですし、そのような切り替えを行えるだけの選手が揃っているチームだからこそモウリーニョ監督の戦術を遂行できるのだとも言えます。

「モウナチオ」と形容されるほどのずば抜けて強固な守備システム

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モウリーニョ監督の戦術理論ではどれほど強力な相手の攻撃でも必ずストップさせてカウンターを行う戦術理論ですから、フォーメーション上は4-3-3などとなっていても、相手攻撃時には両サイドのアタッカーが中盤横まで下がる4-5-1のフォーメーションに変化します。

これだけ守備ブロックの密度を上げた上にさらに4-5のラインを中央に圧縮し、バイタルエリアを完全に埋めてしまうのです。

そのためサイドのスペースは半ば放棄することになりますが、サイドからのクロスを跳ね返すために世界レベルの屈強なCBを配置し、サイドバックにもフィジカルに優れた選手を選びます。

この徹底したバイタルエリア封鎖のシステムを、イタリアの堅固な守備フォーメーションと絡めてモウナチオと呼ばれ揶揄されています。

しかし強固な守備組織を試合中にずっと続けられるほど、選手たち全員の戦術理解度を高めることができるほどの監督は、世界中でも極少数でしょう。

サッカーの戦術③

モウリーニョ監督の戦術に関してそのシステムの合理性などを解説してきましたが、彼にはこれらの戦術理論を駆使した戦術家の顔と並立して選手たちの結束をうながし能力以上の力を発揮させるモチベーターとしても顔もあります。

戦術家とモチベーターの両方で優れた能力を持つモウリーニョ監督

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モウリーニョ監督がチームを指揮すると、そのチームの選手たちはみな彼に心酔し、彼のために勝とうという強いモチベーションを抱けるようになるのです。

具体的なコミュニケーション方法は彼らにしかわからないですが、非常に人間的な魅力があるのではないかと思います。

サッカーは戦術的な部分だけではすべてを語れないスポーツで、やはり選手それぞれの個の能力も試合の結果を左右する大きな要素となっています。

モウリーニョ監督がこの部分にも何らかのアプローチを行い、選手たちがモチベーションを高め個の能力を十分に発揮できる環境を作り上げる手腕を持っているのは確かでしょう。

どのような優れた戦術でも、それを行うのは選手たちだということをよく理解しているがモウリーニョ監督なのです。

サッカーの戦術④

「富者の戦術理論」ポゼッションサッカー

各国リーグの上位を争う強豪クラブがどこもこぞって取り組んでいる現代サッカーのトレンドと言える戦術理論が、ボール支配を主眼としたポゼッションサッカーです。

相手に攻めさせてスキをつくカウンター戦術は、リアクションサッカーと呼ばれているようにある意味消極的なサッカーだと言えますが、ポゼッションサッカーはボールを常に保持することで能動的に相手の守備を崩していこうとする積極的な戦術だと言えます。

ボールを常に保持していれば相手が自陣ゴールにボールを入れることができないわけですから、考え方としては至ってシンプルですね。

「富者の戦術理論」とされる理由

貧者の戦術理論であるカウンター戦術のアンチであるポゼッションサッカーは、ときに富者の戦術理論とも呼ばれます。

ボール支配を確固たるものとし、相手を崩すために積極的にパスやドリブルを駆使するポゼッションサッカーを行うためには、チーム全員のスキルが非常に高い水準になければ難しいため、ポゼッションサッカーをチーム戦術として採用できるクラブは高額な評価額の選手を多数揃えなければなりません。

お金をかけた布陣を求められることから富者の戦術理論と呼ばれるわけです。

攻守に切れ目のないシームレスなサッカー

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サッカーにおいてポゼッションサッカーはある意味攻撃的な戦術理論ですが、厳密に言うと守備戦術を内包した攻撃戦術となっています。

これはカウンター戦術が攻撃と守備を分けて考える分業制なのに対して、ポゼッション戦術は全員で攻めて全員で守るという攻守に切れ目がないシームレスな戦術理論となります。

ポゼッションをしてボール支配率を高めながら相手陣内に入っていくわけですから、守備の選手、特にサイドバックも高いポジショニングを行い攻撃参加します。

多数の選手がパスワークに絡みながら前進していくので、ポジションチェンジを活発に行うことになり、非常に流動的にフォーメーションを変化させていくことになるので、攻撃の選手が低い位置に、サイドバックが高い位置にといった状態のときにボールを奪われた場合、本来の役割とは違った守備のタスクをこなさなければいけなくなるのです。

つまり攻撃と守備が融合することで、ポゼッションサッカーは成り立つと言えます。

バイタルエリアへの出入りで相手の守備ブロックにギャップを作る

サッカーのポゼッションを高めてボールを保持する狙いは、パスワークによって相手の守備ブロックを揺さぶりバイタルエリアへの侵入を容易くするためです。

基本的にサッカーのディフェンスはボールに合わせて左右にスライドして対応するものですが、的確なパスワークで揺さぶることでスライドが間に合わなくなっていきます。

そのタイミングでバイタルエリアにクサビのパスを打ち込むと、相手守備ブロックは中央に圧縮させられますから、サイドのスペースが空いたり最終ラインにギャップが生まれたりします。

これを活用して決定的チャンスを作り出すのがポゼッションサッカーの肝で、このような状況を能動的に生み出すための戦術理論がポゼッションサッカーです。

よく勘違いされていますが、多くのパスをセーフティに繋ぐだけのパスワークではポゼッションサッカーとは言えません。最終的なバイタルエリア攻略のためのボール保持であり、ポゼッションとなるからです。

サッカーの戦術⑤

「ティキタカ」を駆使するグアルディオラ監督のポゼッション戦術

ティキタカとはスペイン語を起源とする用語で、ボールも人もリズミカルに動き、美しい軌跡を描きながらポゼッションしていくスタイルを指す言葉とされています。

このティキタカを織り込んだポゼッションサッカーを究極の形まで昇華させたのが名将グアルディオラ監督で、バルセロナというクラブチームがその代表的なチームです。

基本的なポゼッションサッカーよりもさらに高度なポゼッションを行い、圧倒的なボール支配率によって最初から最後まで試合を有利に進めるグアルディオラ監督のサッカー戦術は、芸術性をサッカーに求める人々を大いに魅了しました。

つまり現実的な勝利を目的とする合理的サッカーがモウリーニョ監督の戦術理論とすれば、真逆に美しく華麗なパスワークでゴールの仕方にこだわるのがグアルディオラ監督の戦術理論だと言えますね。

ボランチが最終ラインに入る疑似3バックシステムでビルドアップの安定を獲得

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現代サッカーのトレンドであるポゼッションサッカーですが、ポゼッションサッカーを志向するクラブチームは攻撃に移るビルドアップ時にボランチがCBの間に降りていく疑似3バックシステムを採用しています。

つまり初期フォーメーションではCB2枚ですが、攻撃を始める段階ではボランチがCBの間に入って見かけ上のフォーメーションが3バックの形になります。

これを生み出したのが名将グアルディオラ監督で、通常のフォーメーションではポゼッションを支えるボランチに相手のFWやトップ下が強烈なプレスを行いやすい配置なのに対して、疑似3バックシステムだとボランチが最終ラインに下がることでマークを受けずにフリーになれ、よりパスワークが安定することになります。

しかもボランチに押されて両サイドに開いたCBの前で、サイドバックがより高いポジショニングを行えるようになり、サイドでの数的有利を作りやすいフォーメーションになります。
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フィールドを狭いエリアに圧縮することで数的有利を作り出す

qoly (28054)

via qoly.jp
ポゼッションサッカーはパスワークが命ですが、単調なボール回しでは相手のプレスの網に引っ掛かりカウンターを受けやすいという難点があります。

このリスクを抑えるために名将グアルディオラ監督の戦術理論では、非常に狭いスペースでのパスワークをテンポ良く行うことで、常に数的有利な状況を作り出すようにします。

選手たちの距離が近くなり、流動的にポジションチェンジを行うことでボールホルダーには常に複数のパスコースが存在し、これが相手のプレスを難しくさせることに繋がるのです。

疑似3バックシステムと組み合わせることで、片方サイドの密度を極端に上げることができますから、ますます数的有利が進み、ティキタカによるボール回しが加速することになります。

トライアングルを意識したオフザボール

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このようにポゼッションサッカーの上位に位置するティキタカですが、テンポよくパスを回すために肝要なのがボールの受け手のポジショニングです。

サッカーではボールを保持していない選手の動きを特にオフザボールと言いますが、ティキタカの精度を維持しているのはボールホルダー以外の選手がこまめに動き、味方同士の位置関係でトライアングルを形成するようにオフザボールの動きをしっかり意識するところなのです。

トライアングルがいくつも形成されることで無数のパスコースが生まれパスワークが安定したものとなります。

またトライアングルを形成したポジショニングは必然的に相手選手のトライアングルの中央に位置しますから、相手から見ると誰がマークしなければならないかわかりにくい中途半端なポジショニングになり、ますますプレスやマークをしにくい状況になっていきます。

狭いエリアに限定することでボールロスト時の守備への切り替えが活かされる

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ティキタカでパスミスなどによるボールロストがあった場合、敵味方が非常に近い距離で密集していますから、すぐさま守備プレスに切り替えることで数的有利なまま相手を囲み込み瞬時に奪い返すことができます。

先に述べたトライアングルのポジショニングを行うと、丁度相手は味方トライアングルの中に入っていますから、攻守が入れ替わるとすぐにプレスで囲み込みやすくなっているのです。

一旦ボールを奪えたと思った相手の隙をつく形で再度攻撃に移れますから、カウンター戦術のように相手がブロックを形成する前にフィニッシュしてしまえるのです。

このような戦術をサッカーではショートカウンターと呼び、グアルディオラ監督はポゼッションサッカーの守備リスクの軽減に使っています。

戦術が浸透するまでに非常に長い時間を要する

このように攻守が融合した名将グアルディオラ監督のポゼッションサッカーのティキタカは、選手全員がしっかり戦術理解を深めることで圧倒的に試合の主導権を握り勝利することができます。

反面、あまりにも流動的で高度な動きを求められるためきちんと戦術が機能するまで長い時間を必要とします。

元々グアルディオラ監督の戦術に近いサッカーを志向していたバルセロナでは、戦術理解度の高いMFと驚異的なキープ力を持つFWが所属していたため、比較的早期に完成度が十分なレベルに達することができました。

続いて指揮をとったバイエルンでは、中盤の選手がグアルディオラ監督の戦術理論を理解することができず、他クラブから引き抜いたりポジションのコンバートを行ったり苦労した形跡が認められます。

この点でもポゼッションサッカーはカウンター戦術よりも選手の質を選ぶ戦術理論だと言うことがよくわかります。

サッカーの戦術理論とフォーメーションやシステムの関係

 Football ZONE web (28045)

日本のサッカー界ではフォーメーションとシステムという言葉をほぼ同義語として扱っていますが、厳密に言うとフォーメーションは単なる選手の並びを指し、システムは前述したカウンター戦術やポゼッションサッカーなどの戦術理論に沿ってどのように選手が動くのかということを指します。

紹介した名将監督二人はフォーメーションで言えば4-2-3-1もしくは4-3-3を用いますが、システムで言えば全く逆のサッカーをしています。

このようにフォーメーションの選手の配置がそのチームの戦術上のシステムを決定するわけではないのです。
ただ戦術上のシステムの機能性を向上させるために、フォーメーションを考えてある場合もあり、システムとフォーメーションが強固に絡みついた戦術理論もあるので一概に別個のものだとは言えないこともあります。

サッカーの試合を観戦するときはこのような視点でフォーメーションを見ておき、試合中の選手の動きからシステムを推測するようにすると、指揮する監督の戦術理論が分かりやすくなると思います。

サッカーの戦術理論のぶつかり合いがサッカーの醍醐味!

サッカーの戦術理論に関して説明してきましたが、難しいイメージを払拭できましたでしょうか。

戦術理論のぶつかり合いがサッカーの醍醐味で、各チームの戦術やシステム、フォーメーションなどを分析的しながら観戦することで、より一層サッカーというスポーツの面白さが見えてくるはずです。また、このような戦術理論を踏まえたサッカー観戦は、サッカーセンスを磨く上で大切な脳内でのシミュレーションに非常に役立つ材料となるでしょう。

サッカーを楽しみながら上達する近道は、深いところまで考えながらのサッカー観戦だと思います。

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